「あ、りがとう」

まただ。この間美術室で見せた優しさ。
普段のなんだか残念なイケメン、という事実を払拭するような優しさ。

……なんかむずがゆいな。

「考えこむのも良いけど、余り考えすぎるのは良くないな。」 

彼は私の身体をそっとはなす。反射的に私は離れていく手を掴んでしまった。

……掴 ん で し ま っ た !?

「ごっ、ごめんっ!」

あわてて手を離すと、幸村くんは怪訝そうな顔で私の顔を覗き込む。数秒後、ああ……と言うような声を漏らし、

「顔赤いよ。多分熱でもあるんじゃないかな?」

確かに先程から顔は火炎放射をしているけれど、これは熱なんかじゃない、あんたのせいだろ……!


その後、幸村くんは私に早く帰れとだけ言って部活に出るため庭園を後にした。


なんか、幸村くんに調子狂わされてるなあ……





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