仁王は私の肩にぐりぐりと顔を擦りつける。

「ちょ、仁王、なにして」「あのな」 

私を遮るように仁王は声を発する。いつもより随分近いところから響く声になんだか体にぞわぞわとした悪寒が走る。

「いくら幸村でも、なまえちゃんを盗られるのは嫌ナリ」

へ。

「……どこにも行かんとって」


今、なんつった?この抱きしめられている状況と、言われた台詞。全て頭の中でパズルが組み立てられ、一致したとき。

私は仁王を突き放して屋上の階段向かい猛ダッシュした。



私が全速力で階段を駆け降りている頃。屋上で仁王はぼそりとつぶやいた。


「……事を急ぎすぎたナリ」


私は知るよしもない。





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