意味が分かりません、先生。


とある日の放課後、私はよく学校とかにある木の椅子に縛り付けられていた。…いやいやいや、真面目な方にロープで。ちなみに場所は音楽室である。なんでこんな事になったかって、それはかなり前に遡ることになる。

私は人前で歌うことがすごく苦手だった。足が震えて声も出なくなるから、歌のテストなんかはいつも最悪だった。

でも歌うのが嫌いな訳じゃなくて、むしろ好きで好きで仕方ないくらいだ。一人でカラオケとかに行くといつでも高得点を叩き出すような感じだった。

歌うことが好きだ。確かにそうだった。
ある日、屋上でイヤホンからガンガン好きな曲を流して歌いまくっていた私を、此処氷帝学園の音楽教師に見つかってしまったのだ。

「みょうじ、テストの時のような歌い方では勿体無さすぎる。これから放課後毎日直々に指導させて貰おうか」

これが縛られて音楽室に居る経緯である。全くたまったもんじゃない。あの日から毎日回避しようとし続けているのだが、卑怯なことにテニス部を使ってくるのだ。手加減してくれる人も居るけど、一番よく来るのは滝くんでしかもすごく怖い。余計逃げられる訳も無くて、毎日縛られて此処へ連れてこられる。

「さあ、今日も始めるか。」

いやあああこの人すっごいにこやかだな。生徒縛っておいてその笑顔とかおかしいと思うんだけど。サディストだ!!

そんな私を他所に先生はいつも通りの発声を始めた。初歩的な事だけど順番に音階を踏んでいくことは凄く大事だと思う。いっつも無理やり高い音出してた感じしたけど、最近はこれをやるおかげか楽に高音が出る。

「…ふむ、なかなか見込んだだけあって素質があるな。」

先生は腕を組んでピアノの前で満足げに笑った。………ここまで、私縛られたままです。おかしいよね、…まあこのまま歌うことに慣れかけた私もかなりおかしいんだけどね。

「先生そろそろ痛いんすけど」

がたがた、椅子の上に座ったまま左右に揺れてみる。……いった、いてえな、縄が食い込んだ。顔を顰めた私を見て先生は縄を解いてくれた。真顔でロープを回収する先生、怖い。そのスーツ着てその縄って。麻縄って。どこのヤーさんだよ。

「もう帰って良いですよね」

適当にスカートをぱんぱんとはらって、出口に向かおうとした時。先生がぽつりと零した。

「………縄も悪くないな」

………氷帝学園にはマトモな奴は居ないのか?多分今、軽蔑の眼差ししか向けられない。

「……ハッ?!まさか!先生縛られたいんですか?!」

新しい可能性を見つけた自分に鳥肌が立つ。そっか、先生Mだったんだ。それは……仕方ないな、うん。

勝手に自己解決してそろっと先生から距離を取ると、心底くだらない、と言った顔で先生はそんな訳ないだろう。と言った。なーんだつまんねえの。

「私Sなんで、もう縛らないで下さいね。」

そう言い残して音楽室から出た。帰る道すがら跡部サマとか言うのに会って、お前監督は?と聞かれたが縄と戯れてると答えてやった。

その次の日は先生自ら私を捕獲しにきて、いつも以上に厳しいレッスンがあったのは言うまでもない。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -