終わった。全部終わった。
この一年近く努力したことを、この一瞬に詰め込めただろうか。
帰り道、友達は早速遊びに行くなんて行ってたけど、私は正直気分が乗らなくて。せっかく誘ってくれたのに断ってしまった。
学校から駅までの長い道のりを一人でとぼとぼと歩いていると、携帯が着信を告げた。どうせお母さんとかだろ。
「はーい…」
「終わりました?」
低くて怠そうな声、死んだように電話に出てから気がついた。…財前くんだ。
「う、うん。今から帰るところ。」
駅で待っといて下さい。
そう短く告げて通話は切れた。財前くんはは相変わらず淡泊だ。
多分駅まで迎えに来てくれるんだろうな。ホームのベンチに腰を降ろして、なんとなく惚けてしまった。
……もし、受からなかったら私、どうすれば良いんだろう。
向かいのホームに一台電車が来て、その中にダウンを着た財前くんが居るのが見えた。財前くんはこっちのホームまで来て、お疲れ様っすわ。とだけ言った。
財前くんは二年、私は三年。因みに財前くんは私立、私は公立の中学に通っている。
たまたま、日本橋で迷う私を助けてくれたのがきっかけで。
今は、一応付き合ってたりする。
だから、私が財前くんの通う四天宝寺に行きたいと思うのも当然で、そこの高等部を受けた。
でも、四天はかなり頭が良くて正直私の頭じゃ厳しいって言われてたから、かなり不安だった。
「財前くん、ごめん、受からんかも、しらん……」
並んで歩く並木道、終わった安堵と結果への不安が溢れ出した。
「……先輩、」
財前くんは立ち止まって、突然私の方に向き直る。真剣な顔をして、じっと見つめるから思わず瞬きをしてしまう。
「………ああ、やっぱ言われへんわ」
くしゃり、財前くんは片手で顔を覆って、困ったような笑顔を見せた。
「え、なに、気になるやん、」
恥ずかしいのか早歩きで歩いていく財前くんに追いついて、パーカーを思いっきり引っ張ってやった。
「うあ、先輩痛い痛い痛い!離せや!」
ばたばたと暴れて財前くんは手を離した。
はぁ、と小さくため息をついて、彼はぼそりと呟いたのだ。
"俺の運命の人なんやから、受からんわけないやろ"