01 / Apx;ai-a prTeboutH. [古の都]

こんなところにエルフは居るのかと疑ってしまうほどに森は鬱蒼とし、稀に木々の間から木漏れ日が溢れ照る。森の動物は主にエマとロームングルを見張るように目を凝らす。ロームングルの首に巻き付いた蛇もとい竜、イルヤンカが敵意を顕にする。

「こらイルヤ、森を敵に回しては今日の寝床がなくなってしまう」

イルヤンカの真名はエマ曰くイルルヤンカシュだそうだ。イルヤは一度大きく威嚇し、ロームングルの首に落ち着く。

「いいかい、ロームングル。僕も君もエルフは大ッ嫌いだけど寝床のために媚を売ることが必要だ。だから何があってもエルフに剣を抜いてはいけないよ」
「御意」
「エルフに跪く役目はレイメがやってくれるから」
「は?」

さも当然のようにエマは言ってのけた。そのことに疑問を持つことは愚か、反抗することは許さない。笑顔がそう語っていた。

「因みに、僕らは人間もドワーフも嫌いだ。ていうか世界が嫌い」
「厨二病か」
「だからレイメも嫌い。イアルヴもあまり好きじゃない。臭いし不潔。ロームングル、僕の服を洗濯するときはレイメのと一緒にしないでね」
「思春期の娘か!」
「!」

ロームングルの刃が喉元に当てられる。イルヤの牙が首筋に立てられる。二人はエマを侮辱したと受け取ったらしい。
レイメは手を上げ、固唾を飲み込む。

「こらロームングル、イルヤ。優しい僕が君のために忠告しておくけど、ロームングルは本当に怒らせない方がいいよ。怒った彼は例の5人ですら止めることはできない」
「あ、はい。……ああ、そうだ。ロームングル、さん含めた5人って一体何なんだ?……ですか。1人足りなかったけど、とても人とは思えない」

その言葉には畏怖の念が込められている。そこが知れぬ強さ、声すらも隠れ、息をすることすら躊躇われた。その恐怖は未だ残っており、手が震えは諌めることすら叶わない。

よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、エマは鼻を鳴らす。まるで子を自慢する親のようだ。

「ロームングルは僕の最初の家来さ!よく分かんないけど第2世紀の魔族との戦争の頃、ロームングルはそれはそれはとてもイケメンな人間の、古代国家カザル・ヴァードの王様だったんだよ。しかもマルドゥ・ギーバの怪竜イルルヤンカシュを従えることができた唯一の人間でね、剣術は並外れ、一万の屈強な兵を従えてたんだ。そして、イルの魔族と天族、人間、エルフとの真の平和を実現するっていう馬鹿げた構想に、二つ返事で協力してくれた人だよ。そして、エマとしての僕に唯一仕えてくれる人さ」

その瞳はとても穏やかなものだった。心の底こらロームングルを信頼していることが、素人目でも分かる。

「あと他の5人はねぇ、アクラガスの国王ヒルディエント。現在最高の軍国を築き上げた王様なんだよ。闇のエルフであるイナンナと航海者ハンノ・バルカの息子フィンディルは至上唯一のエレボスでありエルの光を持つ人だね。今回は居なかったけど、ロームングルのお父さんの代から仕えてて、魔導の力はイルよりも上手なんだ。あの小人族と竜の鱗を持つ魔族は気高きハザドの騎士ポリュペモスとヘカントケイル。彼らは竜狩りの名手で、対人よりも対竜を得意とする武人さ。そして最後に、あの霜の巨人は現在のユーゲンデルを造り上げたユミルの子の一人ヨトゥンだよ。流石に勝手にべらべら話すことはできないけどね。でも、世界から拒絶されたイルにずっと仕えてくれてる、イルの唯一の味方さ」
「へえ……でもイルにだけはならないって言っていたわりには推すんだな」
「当たり前さ!僕にとって彼らは君よりも大切な仲間だからね!羨ましいでしょ」

胸を張り、嫌な笑顔を浮かべる。誰が羨ましいと思うか、いや思わない。思うわけが無い。気持ち悪い。





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