7-5 / 絶望の果てに

その後、アクラガス兵による拷問の日々が始まった。目的は唯一つ、スエルンの居場所を吐かせることだった。
同時に、"神狩り"が始まった。スエルンの森の精霊や神々、育まれた木々たち、それら全てから生命を奪った。
精霊たちは見たことも無い絡繰に入れられ、その中で力を奪い取られた。泣き叫び、助けを求め、死んだ。しかし、スエルンに助けを求めることが出来なかった。

「何故誰も吐こうとしないんですか」

リュネイセルは虫のような息で、途切れ途切れにやっと空気を肺に送り込む。殆ど世界を映さなくなったその瞳も、不思議と道化師の顔はよく映す。彼は狐のような笑顔を浮かべ、次の遊びを考えていた。

「鞭打ちは定番すぎてそろそろ飽きました。次は何して遊びましょうね」

背中に刻まれた裂傷は早くも化膿し始めていた。それだけでなく、傷口から這入った百足が周辺の肉を喰い漁り、肩甲骨が僅かに剥き出しになっている。
左腕には小さな蟲が脚を根のように広げ、少しずつ、確実に肉を腐らせていった。

「あんまりだんまりを決め込むと、お次は貴方の仲間で遊びますよ?」

愉快そうに視線を向ける。

「エルフって、憎しみや恐怖に身を染めたお仲間の血を浴びると、その身を黒くするみたいですね」

今まで視界に入ってなかった者達が、道化師の世界に映り込む。

「それでも言っていただけませんか?」

嗤う。リュネイセルも、他のエルフも、スエルンの居場所を吐けないことを分かっての要求だった。


それからの拷問は趣向が変わった。
最初にスエルンの居場所を吐かせないために、リュネイセルを除く全てのエルフの声帯を潰した。
ある者は全身に熱湯を浴びせ続けた。ある者は全身の皮を剥がされた後で、焼かれた。ある者は少しずつ切り刻まれ、内蔵をかき混ぜられた。ある者は蟲に喰わせた。それらの屍肉をリュネイセルに喰わせ、血は傷口に注がれた。 唯一つだけ、苦しみに悶える声が響いた。人間は嗤った。
レーヴァテインの光は確実に塗り染められ、身を黒く汚していった。
肉は固く、指はそのまま飲み込んだ。眼球は柔らかい。心臓はやや固く、男性器は吐き出した。子供と女の肉は柔らかかった。しかしそれらも、最後には全て戻した。胃液によってある程度溶かされたものもあるが、原型を完全に留めたものもあった。
道化師は愉快そうに笑っていた。

ある日、1人の女エルフが連れてこられた。両腕は切り落とされ、焼いて止血した痕が生々しく残っている。抵抗できない身体の至る所が鬱血し、腹は張り裂けそうなくらいに膨れている。助けを求める口からは声は出ず、歯がないため、虚しく空気が抜けた。

「ララノア……?」
「斥候が逃げている彼女を見つけたそうです。薄情な女ですよね、里が燃えてお仲間が殺されてるのに、長は仲間を守ろうとしてるのに、1人コソコソ隠れてたのですから」

道化師は嗤う。

「そんな女なら、我々が使い古してもいいですよねェ?」
「やめろ…」

アクラガス兵がララノアの脚を無理やり開かせる。真っ赤な2対の瓜が顕となる。恥ずかしさで脚を閉じようとするも、その抵抗はか弱いものだった。

「醜い身体ですが、ないよりはあった方がいいでしょう?」

大きな手が秘部へ這い寄る。

「………から、…やめろ」
「?」
「……奥方の居場所を教える。だから、ララノアをこれ以上傷つけないでくれ」

苦渋の決断だった。しかし、それしか無かった。誰よりも深い傷を負った太陽を、これ以上苦しませたくなかった。たったそれだけだった。





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