02 / Lose was re enknow [呼ぶ声]

天真爛漫にエマは森を歩く。下手くそな歌を歌いながら、イルヤとテウメッサと共に歩く。

「なぁ、エマさんや。俺たち一体どういうルートで旅してくかっていうこと全く把握してないのですが」

レイメは恐る恐る長年の疑問を聞いた。エマは驚いたような顔をする。

「こないだ教えたじゃないか……!」
「待って、俺聞いてない!なぁ、ローエン!」

ローエンに同意を求めるが、慈悲を与えてくれなかった。

「聞いてないのか……?」

その言葉はあまにもレイメを引き離した。辛い。
エマが仕方ないなーと小さく呟く。

「エマ様が教えてあげよう」

自慢げに鼻を鳴らす。この高慢な態度がどうにかならないものかとつくづく思う。

「あっちにこーばばーっと行って山登ったらががーって降りてどどーんと人間の街行ってわーっと」
「ここから東に神弥(カヤ)峠に迎い、三途(ミト)という男のところへ寄る。朱海の里だ。その後は山を下りスエルンの森を抜けてエオウェのエルフの里へ、次にシュルム、アイゼンガルド、リュンメの関所からアクラガスへ行く。そして、アクラガスから大きく迂回してイリュシオン山脈へ行き、ヴァルゴの巣穴を通って"私は"テーベの暗黒門へ。"エマは"ローネンス監獄からイシュガルへ入る」

ロームングルが静かな声音で、エマの暗号のような説明を翻訳してみせた。ローエンはアクラガスかと小さく呟く。

「なんとかしてアクラガスを味方に付けたいからね!」
「見込みはあるのか?」
「ない!!」

清々しい笑顔で答えた。レイメは頭が痛くなった。本当にエルの門を開くという、途方もない旅は成功するのだろうかと。何故、あの時死ななかったのか。不幸でしかない。

「そこでローエン、君にアクラガスを説得して欲しいんだっ」
「それは無理な話だ」
「ふっふーん。やってみないと分からないよ?さてはローエンくんは怖いのかな?かな?」
「……勝手に言ってろ」

テウメッサの耳がピクリと動く。主を心配するように見上げるが、当の本人は全く何もないといった風だった。

「そーいえば狐さんにお名前付けてあげてないよね?」
「……あっ、そういえば」

視線がテウメッサへ集められる。イルヤの頭の上で首を傾げる。尾が炎のように揺らめき、涼やかな風が吹く。立ち止まる一行の中で唯一人、ローエンだけが歩みをやめない。

「何にしよう?」
「ポチ?ごん?エリザベータ?」



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