01 / Ro:ze rIEn [海の都]

砂漠越えをすること早40日。ようやく緑がその姿を表し始めた。まだ育ちかけの緑を追うと、先には鬱蒼とした森が広がっている。更に樹精であるエントが、砂漠まで足を進め種を植え、水を与えていた。

今の今まで先の見えない砂漠越えにようやく決着がつき、レイメの顔が明るくなる。エマはようやくエスガリオンを食しなくても良いと歓喜する。結局デスミラジは現れなかった。とはいえ、これからは山の幸が待っている。ようやく上手い飯にありつけると考えると腹が鳴って仕方がなかった。

「レイメー、今度空腹で倒れたら置いていくからねー」
「……はい、気をつけます……」

エマはまだ暑い暑い言いながら森の入口に足を踏み入れた。




次に目指すはカリュブリアと呼ばれる水の都である。エマが言うには商業大国で、海を故郷とするエルフが住まうのだという。そのエルフらに少し挨拶するために寄りたいのだそうだ。

森はまだ若々しく、木陰も小さい。しかし奥に進めば進むほど樹齢を増し、鬱蒼と生い茂る。メネラ(猪)の親子が群生するキノコを食し、ワグナー(猿)が人間を物珍しそうに見つめる。彼らは楽しそうに戦慄き、森中にレイメたちの存在を伝える。あるエントは小さな森の動物たちと遊び、あるエントはエント同士のお喋りを楽しむ。"暗黒大陸"と呼ばれる、大河ユーゲンレディア以南へは来たことが無かったため新鮮に感じた。
テウメッサも楽しそうに森を駆け回り、イルヤと戯れながら進む。エマもそれに加わり、ローエンは下らないと言いながらも、微笑ましいと言わんばかりの表情を浮かべている。ロームングルは相変わらずだが。全く表情が読めない。

何を考えているのか、何を感じているかが全く分からない。レイメにとって、ロームングルは感情がないように思える。あまり喋らないし、口を開いても言葉に抑揚がない。この森に入ってから其れが特に際立って見えた。客観的に第三者の視点から彼らを見ると、ロームングルだけがこの世界に取り残されてしまっているような気がしたのだ。

そんなことを考えている時点で、レイメも取り残されているのだが。

「何だろう……気がついたらぼっちになってる奴じゃね?」

知りたくない現実を知ったレイメの心は暗く沈んだ。悲嘆を引きずりながら暫く歩き、前すらも見ていなかったため、ロームングルの背に鼻をぶつける

「でっ……」

「白髪はついに前すらも見て歩けなくなったか?それとも認知症的な何かか?」

ローエンは相変わらず口が悪い。絶対に友達が少ない、レイメは心の中で毒を吐く。

「友は数ではなく質だろうがクソジジィ」

サラッと正当化しただけでなく、サラッとクソジジィまで言い放ちやがった。レイメは絶対いつか殺してやると心に固く誓う。




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