02 / Couver rs Mol-gouce shardain.[死の砂漠]

「ところで、俺は何で此処にー………」
「……」

男は目を訝しげに細める。心なしかレイメは、責められているような気がした。
エマはただ笑っているだけで、イルヤが暇そうに欠伸をする。世は冷たい。誰も、何も教えてくれない。しかし、考えられる答えは一つ。レイメは短く礼を述べた。

「体調は大丈夫か」
「いや、特に問題は…」
「お腹が空きました。」
「お前は黙れ」
「レイメが」
「こらっ」

腹が鳴る。すると、忘れていた腹痛が再びやってくるのだ。
男は呆れたような眼差しを向け、「あんたにくれてやる食料はないぞ」と言い放つ。挙句、食いたいのなら金を払えと請求までしてくる。こいつには優しさの欠片もないのかと、唇を噛み締め、込み上げてくる文句を諌めた。

唐突に、男は立ち上がり身支度を始める。

「どっか行くのー?」
「……仕事に決まってるだろうが」
「知らないよ!え、何、夜の営み?あいてっ」

レイメの拳がエマの頭に降される。エマは「何も僕悪いこといってないじゃん!」と抗議するものの、レイメには通じなかった。
男はつい、笑いを零す。小さすぎて誰も気付かなかったが、彼は確かに笑った。



暗く、木の根が張り巡らされ、僅かな光しかないこの道がまるで断頭台に通ずる道のように感じる。
ロンゾ・アンジールを先頭に、3人のイアルヴに連れられセシリアはその道を歩む。
何処へ行くのか、皆目見当はつかない。
暫く歩くとそこは、天高くから水が溢れ、それを割くようにアーチ型の門が建てられている。奥には木を堀砕いて作られた空間があり、木の根に寄り添うようにして一人のエルフが苦しそうに呼吸を繰り返していた。
アンジールが膝を折り、忠誠の意を表す。
美しい金髪を持ちながら、黒い肌を持つエルフが顔を少し傾けた。
瞳の色は"青"ではなく、人間特有の茶とドワーフ特有の赤の瞳が億劫そうに開かれた。

「アンジール、エマは」
「は。ロームングルを連れ鍵の男と逃亡しました。恐らく、己の意思でイル様になることはないかと」
「そうか…」

彼はこころなしか安堵したかのように息を漏らした。「やはり、お苦しいのですか」訝しげにに尋ねる。それを否定するように首を振る。

「イルが復活すれば私をラーヴァナから解放する、と持ち掛けられたのだろう?」
「ええ、まあ」
「恐らくそれはない。イルに会いたいという気持ちは無論あるが、イルが復活しては私の心が持ちそうもない」

彼は笑い、ふらふらと立ち上がる。足取りは覚束ず、呼吸は相変わらず苦しそうだった。
アンジールが彼の体を支えるが足が体重を支えきれず、その場に崩れ落ちる。

「主殿、そのお体では」
「ローレライ、お前の忘れ形見は私の手から離れた。守れそうもない。私にはもう何もできない」
「主、殿…?」
「エルの加護があらんことを……」

エルフの男はそう言いかけて、深い眠りに身を落とした。






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