【 マリア嬢の森 】



[物語]

───1.
彼女は唄う。命を愛し、憐れむために。全てを永遠の錬金術が蝕み、それでも唄う。悲しみは全てを鉄へと変え、あらゆる命は永遠となる。父も母も、国も弟も、全ては永遠に、崩れ壊れることもない存在に。争いのない時の止まった平和な世界、それを幼き命は望んだ。男の腕をもぎ取る。男の胸を抉る。あっさりと背を貫き、神の肉体は脆くも崩れる。それでも彼女は唄う。彼を慈しみ唄う。即ちルルスの躰はマリアの腕に抱かれ、最期の花を咲かす。

───2.
全ては零に還った。錬金術という魔導も全て零へ。マリアを唯一人残し、永遠に止まった時の中で、ガイアの刻に置き去りにされても尚唄う。配線が切れ、関節が錆び、部品を結合する螺子が外れても尚一人。鈍色の体はくすみ、歌い潰した喉は壊れ、願いが遂げられても独り。その姿を忘れ、神すらもマリアの姿を忘れても尚歌い続ける。彼女は今もあの時をずっと生き続ける。つまり、マリアが幼く、父も母も、そして教王も、まだ眠る弟も生きていた時代、その頃をマリアは永遠に生き続ける。

───3.
願うことなら争いのない平和な世界を。誰しもが分かち合える世界を。美しい光の花を咲かし、全ては零へ還る。





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