【ヘレネ / 】
[物語]
───1.
教王に仕える錬金術士ヘレネ。彼女は命を対価にしない錬金術の開発を進める傍ら、戦争があらば最前線に立った。教王はいい加減腰を落ち着けよという。ヘレネの答えは断固として否、命を対価にする錬金術士に負けるわけにはならないという意志があった。師はずっと錬金術の在り方について苦悩し続けていた。数多の犠牲の元に成り立つ罪なる禁術。反面、錬金術は希望の光。故に師は編み出した。命を犠牲にしない錬金術を。
───2.
教王は今日もいい加減腰を落ち着けよとヘレネに言う。傍らで笑うホーエンハイム、こんなゴリラみたいな女を娶る男などいやしないと豪語した翌日、三年分の給料を叩いた指輪をヘレネに捧げる。ヘレネは笑った。そして細い手にレンチが握られる。
───3.
ラーヴァナが齎すのは闇であった。ようやくヘレネが求めた錬金術が完成する。対価は闇、即ちラーヴァナの闇である。つまり命の代わりに強い魔を持つこれを対価として捧げる。今まで命を対価にする式の部分を闇を対価にするよう書き換え、ホーエンハイムの編み出した錬金術に組み込む。こうして錬金術は新たな発展を遂げ、ようやく負の連鎖を断ち切ることができた、そう思われた。
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