「君は誰?」
「僕はお前だよ。ただし鏡の中のね」
「鏡の中の俺?でも背は高いし格好良いし俺とは正反対だよ」
「鏡は物事を反対に写すだろ?」
「そうだけどそれって右左じゃない?」
「そう思ってるのは君だけかもしれないよ。鏡に写ってるのは真実じゃない」
「そうなの?」
「そうだよ。人の目に映る君の姿、鏡に写る君の姿、鏡の中から見る君の姿、鏡から見る君の世界、全てが同じとは限らない」
「んー、何か難しいな」
「君は頭を使うのが得意じゃないからね。ちょっと難しかったかも」
「じゃあ君は賢い?」
「賢いよ」
「自分で言うなよー」
「でも俺は君みたいに可愛く笑えない」
「え?可愛くないよ」
「可愛いよ。ずっと君に触れたいと思う程に。鏡の向こうからいつも君だけを見つめてた」
「えっ、え?」
「人は自分と異なる面を持つ人に惹かれるものでしょ。俺と正反対な君に惹かれるのは自然じゃない?」
「そう、なの?」
「君は俺に惹かれない?俺に触れたい、愛されたいって、一目見た時から思ってなかった?」
「それは…」
「人は自分とは異なる、でもそれ以上に自分と近い存在にも惹かれるんだよ」
「それってナルシストって事?」
「ちょっと違うかな」
「難しいよ…」
「ふふ、じゃあ難しい話はここで止めようか。折角君と触れ合えるんだ。野暮な話は不要だね」
「んっ、ぁ…」
「可愛い『僕』…愛してあげるから愛しておくれ」
やっと君に触れられた。
back