怪我するとな、痛いんだぞ


そう言って苦く笑った彼は
今 どこにいるだろうか


食料が尽き、衣服もあちこち破れ、何もない
帽子はとっくの昔に薪にくべた
軍帽があるから要らないだろうと、上からの命令だった





怪我するとな、痛いんだぞ


そう言って苦く笑った彼は
あのときどんな気持ちだったろう


もう人の気持ちなんて考えてられないこの地において
何故そんなことが言えたのか
毎日毎日仲間は減っていく
最初は怖くてしょうがなかったこの銃は
今ではないと怖いものになってしまった
今日は僕があの弾に散るかもしれない
当てなきゃ、あの金髪に
当てなきゃ、当てなきゃ僕が…




怪我するとな、痛いんだぞ

みんな、同じ人間なんだからさ



彼の弾は誰にも当たらなかった
死んだ仲間の数だけ
あのよどんだ空に打ち上げられた


性善説を具現化したような僕らの隊長は性悪説を具現化したような国のお上に殺された




みんな、同じ人間なんだからさ




そういわれても僕は
あの金髪が的にしか見えないくらいには
歪んでしまったのだ




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