なんか、すごい奴がきたなぁ…
それが最初一之瀬が来たときに思ったことだった

そうとしか思えないほど一之瀬はすごい奴だった


「だから、しょうがなかったんだよ」

部活が終わって2人きりの帰り道の途中
ははっ、と 彼は笑った
いつものように頭の後ろで手を組んで




今日、FFの準決勝の
スタメンが発表された
半田はスタメンから外れた
代わりにスタメンに入ったのは、一之瀬

チームは"フィールドの魔術師"などという異名を持つ一之瀬の参加に活気づいていた

勿論、僕だって彼の参加は心強いと思う


だけど、だけど、
(ずっと、がんばってきたのにさ)

彼が落とされたのが どうにもこうにも腑に落ちなかった

そりゃあ、半田なんかより一之瀬のほうが頑張ってサッカーしてきたってプレー見てれば解らないこともないけど

けどさ…!!


「なーんて顔してんだよ、マックス」
「わっ!!?」

突然 視界が暗くなった
どうやら半田が僕の帽子をずらして目を隠したらしい
そのままグリグリ頭をなでるもんだから髪の毛がぐしゃぐしゃになっちゃったじゃないのさ、全く


「なにしてくれてるのさ、もー…」

帽子を直そうとしたのだが、半田が手を離してくれない

「ちょっと、半田?」

帽子直したいんだけど…そういう前に前から半田の声が降ってきた

「大丈夫!ちゃんと練習は真面目にやるし!だから、だからさ…」
「半田…?」

半田が手を離してくれないから
仕方なく僕は帽子を脱いで、彼を見た
後ろに夕日があったから、逆光になっていて表情が見れない

「頑張れよ!木戸川清修戦!」


きっと半田は笑ってる、そう思った
チームメイトを笑って送り出せることも彼の強さだってことを僕は知ってるから



それと同時に気付いた
さっきまでの腑に落ちない
あの感じの理由

あれは、僕のただのエゴだ

優秀な選手とプレー出来ることがどんなに素晴らしいことかわかっていても
それを軽く上回るくらい僕は半田とするサッカーが好きになっていて、ずっと半田とサッカーしてたいと思っていたんだ


その思いが、叶わなくなった初めての試合に知らず知らずのうちに拒否反応を示していた、なんて
思い通りにことが進まなくてだだをこねる小学生か、僕は…


「半端君に言われなくても手なんてぬかないよー」

ぴょんっとジャンプして僕は半田を抜かした
その際に半田から帽子を取り返すのは忘れない

「なにをうっ!」

うしろで何やらぎゃんぎゃん喚いてる半田の声を聞き流しながら
僕は髪の毛をおおざっぱに整えてからまた帽子を被った




夕日が奪った表情も
奪い返せるぐらいには君が好き






――――――――――――――
のせ好きだけど、好きだけど半田はもっと好き(´・ω・`)



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