#微々たる休息
『あっ、マスルールさん、モルジアナ。こんにちは。』
「ん、」
「こんにちは莉亜さん。」
ある日の昼下がり。ぶらりぶらりと散歩をしていると、一見兄妹に見える二人が歩いていた。
『お二人とも本当に兄妹みたいですね。髪色も同じですし、目元もそっくりですね。』
「ファナリスは皆こんなもんだ。たぶん…、」
「マスルールさん以外のファナリスと会ったことがないので…、」
『あ、でもレーム帝国にはファナリスがたくさんいらっしゃるって噂で聞きましたよ。』
「たくさん…、」
モルジアナは目をキラキラさせていた。今まで自分と同じ種族であるファナリスに会うことがなかったモルジアナにとったら魅力的なことなのだろう。
『モルジアナ可愛い…、』
「!?」
『妹にしたいですマスルールさん。』
「なんで俺に言うんだ。」
『お兄様には許可を取った方がいいのかなって…、』
「お前も俺の妹みたいなものなんだから、許可なんて必要ないだろ。」
正直驚いた。マスルールさんもこんなこと言うのかと。でも嬉しかった。マスルールさんはこんな私を妹のように見ていてくれていたのが。
「マスルールさんと莉亜さんが私の兄と姉ならば、きっと毎日が楽しいと思います。」
ふわっと笑うモルジアナを思わず抱き締めた。モルジアナは少し戸惑っていたが、遠慮しがちに背中の裾をきゅっと握ってくれた。
「おや、三人共揃ってどうしたんですか?」
「ジャーファルさん。莉亜がモルジアナの姉になりたいって…、」
「話の展開が全く読めてこないのですが…。」
『モルジアナが可愛いですジャーファルさん。妹にしたいです。』
「わかったからその緩んだ顔をどうにかしなさい。」
ジャーファルは莉亜の緩みきった頬を人差し指でぷにぷにと押した。
「マスルール。妹が増えて良かったですね。」
「ッス。」
「そうだ、国民からお菓子をいただいたのですが、三人共良かったら一緒に食べますか?」
『食べます!!』
「いただいてしまっていいのですか?」
「勿論です。莉亜、モルジアナの謙虚さを見習いなさい。」
『うっ…すみません…。』
「冗談ですよ。素直なのは莉亜の良いところですから。さぁ、お茶でも入れていただきましょう。」
まるで母のようなジャーファルに莉亜、モルジアナ、そしてマスルールがついていく。その様子はダレが見ても微笑ましい様子で、少しの間だけ国の名物として噂されたのだった。
((微々たる休息))