#女神の再来
場所は南海の島国。かの有名な七海の覇王が開拓した絶海の孤島にあるシンドリア王国。
そこではちょうどアラジン、アリババ、モルジアナが食客として招待されていた。彼らはバルバッドでアル・サーメンとの死闘の後、シンドリア王宮内に匿われていたのだった。
そして、シンドリア王国北東沿岸の監視塔では、海に潜む南海生物を肉眼で確認し、警戒令を出したところであった。
南海生物であるアバレウツボはシンドリアに上陸し、国民達は半年ぶりの祭りだと喜んでいる。
「王よ!東地区果樹園地帯に南海生物が出ました。」
「そうか。ちょうどいいアリババくん、君の剣術の師匠の腕前を見せよう。」
「え?」
「"八人将"の召集だ!」
シンドリア王国、現国王であるシンドバッド。彼はシンドリアを支える八人将と共にアバレウツボが暴れている場所へ現れた。国民の歓声があがる。
「今日の獲物はお前の剣で仕留めろ、シャルルカン!!」
「仰せのままに、王よ!」
アバレウツボの撃退を命じられたのは八人将の剣闘士であるシャルルカン。彼は鮮やかに、そして滑らかにアバレウツボを捌き、解体していく。そして、まるでお皿の上に盛り付けたかのようにアバレウツボの解体が終わった。その様子にアリババは驚きを隠せなかった。
「というわけでアリババくん…こいつが君の剣術の師匠のシャルルカンだ。」
「よろしく!どうしても剣術が上手くなりたくて、指南役を探してたんだって?」
「ハイ!」
シャルルカンはアリババが剣術を好きなのを嬉しく思ったのか肩を組んでアリババに絡む。そんな様子を見てヤムライハはシャルルカンに喧嘩を売った。ヤムライハは魔法を、そしてシャルルカンは剣術が最強だと言っていつものように喧嘩をする。犬猿の仲というものだ。そんな喧嘩に巻き込まれたアラジンとアリババは困った表情をするしかなかった。
そんな中、密かに密かにもう一匹のアバレウツボが近づいてきていた。それに気づくものは誰もおらず、アラジン達を襲おうとした。
「ゴアアアアアア!!」
「なっ、もう一匹!?」
「皆離れろ!!」
シンドバッドの咄嗟の判断だったが、力無き国民は反応が遅れてしまい、アバレウツボが襲いかかってくる。
「きゃああああっ!!」
「うわああああっ!!」
『アスファル・サイカ<豪風剣>!!』
もう少しで逃げ遅れた国民がアバレウツボの餌食になる、と言うところで、何者かが魔法でアバレウツボを細かく細かく捌いた。シャルルカンが捌いた時よりも細かく細かく捌かれており、人が食べやすいように一口サイズに切り分けられている。
「誰だ!?」
アリババは空を見上げた。空にはまるで女神と錯覚してしまうかのような女の子が浮かんでいた。
その少女を見て、アラジン、アリババ、モルジアナ以外のシンドリアの者達は唖然とした。シンドリア国民がずっと待ちわびていた者が帰ってきたのだから。
それはかつて、「宝石のような瞳を持つ女神」と謳われた、市瀬莉亜だった。
『お久しぶりです、皆さん。』
にこりと笑った莉亜の表情は、彼女がシンドリアにいた頃と何も変わらなかった。
((女神の再来))