#迷宮ザガン





「ザガンはまだか…?」

ゼェセェと息を切らすアリババ、そしてアラジン、モルジアナ、白龍、莉亜は迷宮を目指して島奥を歩いていた。ザガンまでの道程は思っていたよりも長かった。

『アリババ君大丈夫?』

「ああ、大丈夫だ。ありがとな。」

「見えてきたよ!あれがそうじゃないかな?」

アラジンが指差す方向には建物のようなものが建っていた。しかしその道はまだ近くはない。

「……?」

「どうしたモルジアナ?」

「今、何か光って…?」

『何か来る…!!』

ザガンの迷宮であろう建物から出てきたのは数個の光だった。その光は莉亜達の周りを飛び、やがて蔓のように伸びて5人を迷宮に引き込んだ。

「迷宮の聖文!!!」

『くっ…、』

門から溢れ出す光の眩しさに目が眩んだ。初めての迷宮に正直緊張している。私はきっとジンと契約は出来ないだろう。4人の行く末を見守っていようと強く思った。

『何…これ…!?』

目の前の光景に目を疑った。無数の赤い渦、地球に似た星、宇宙のような空間。ここが迷宮なのだろうか。

【莉亜よ。久方ぶり、というわけでもないか。】

『ミシャ!?どうして…、』

突然莉亜の目の前に現れたのはミシャンドラだった。

【迷宮の中に入る途中であれば少しの間だけ会話が出来る。】

『そうだったんだ…。』

【莉亜、わかっていると思うが悪しき存在が迫っている。】

『うん。すごく嫌な感じがしたの。ルフが悲しみと憎しみで真っ黒だった。』

【運命に逆らった末路だ。莉亜、人間は私欲の為なら手段を選ばない醜い種族だ。現実から目を背けるな。】

『うん………。大丈夫、ちゃんと向き合うよ。』

【そうか。いつでも私の名を呼べ。力を貸してやろう。】

『ありがとうミシャ。』

辺り一帯は光に包まれ、私は目を瞑った。次に目を開けた時は迷宮の中だった。モルジアナが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。

『ここは…、』

「迷宮のスタート地点の真下です。」

『そう…モルジアナは迷宮初めてじゃないの?』

「はい、アリババさんのジンの迷宮に入ったことがあります。」

『そうなんだ。怖くなかった?』

「……はい。」

少しだけ寂しそうな表情で遠くを見つめるモルジアナ。話をしている間にアラジン君や白龍君がスタート地点の真下にたどり着いた。最後はアリババ君。モルジアナに抱かれる姿はなんとも言い難い光景だった。

「モルさんが最初に着いて良かったね!」

「では、下へ降りてみましょうか。」

私達がいるのはとても面積の小さい地面。下を見れば暗闇が広がっていた。モルジアナが私達4人を持ち上げて下へと降りようとしていたので私は全力で止めた。

『私浮遊魔法使えるから!私の魔法で降りよう!?』

「でも…、」

『大丈夫。そんなに魔力を使う魔法じゃないから。ね?』

「はい……。」

しぶしぶ食い下がってくれたモルジアナに小さく感謝した。ファナリスとはいえ、こんなか弱い女の子に男の子3人を担がせるなんて出来ない。結局私は魔法を使い、4人と共に下へと降りた。到着した場所は、花が咲き、生き物がいて、たくさんのドアがあった。迷宮らしくない光景に開いた口が塞がらない。

しかしその場所は安全とは言えなかった。そう、迷宮には迷宮生物がいる。それは私達が迷宮を攻略する為の試練だった。

「オマエら…超ウマそう。」

「カ…カメが…、」

「しゃべった!?」

「うわああ、なっなんだこいつは!!俺を食べるな!!」

『白龍君落ち着いて…!大丈夫、そんなに害はないから。』

「え!?…あ、そうですね…すみません。」

『ううん、私もドキドキしてるの。迷宮は初めてだからね。』

「そうだったんですね。てっきり何度か迷宮に行っているのかと。」

『だと良かったんだけど。…一緒に村の人達助けようね。』

「!!…はい。」

バシバシと自分の頬を叩く白龍君。安心させたかったが、彼の表情はまだ硬い。もう少し気楽にしてほしいけど、きっと白龍君にも事情があるのだろう。

「よしっ!これから先も何が出ても…落ち着いて行こうぜ!」

「おう!」

アリババ君の意気込みに賛同するようにアラジン君が返事をする。しかし迷宮は私達の想像を超えていた。様々な迷宮生物は私達を襲う。最終的にはハチミツを求める大きな大きな熊が現れた。最初は穏やかな表情をしていた熊だったが、何かをきっかけに凶暴化し、襲い掛かってきた。

「ハチミツよこせよオオオオ!!」

一直線にこちらへ向かってくる熊を避けたが、白龍君が何故かその場から離れなかった。

「どうした白龍!?」

私は戻り、白龍君に迫り来る熊の腕を受け止めた。

『ぐっ…、』

「莉亜殿!!」

「はああああっ!」

モルジアナは動きが止まった熊の足に攻撃し、アリババ君が切りつけ、アラジン君が撃退した。

『白龍君大丈夫だった?』

「すみません…すみません…。」

ああ、また白龍君の表情が曇ってしまう。何も出来ない自分がどうしようもなく嫌になってしまった。


((迷宮ザガン))


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