#いざ、迷宮へ
「サブマド兄さん!アブマド…兄さん…!?」
南海の島に辿り着いた莉亜達は港に降り立った。そして、その場にいたのはアリババ君の異母兄弟である元バルバッド王、そして副王だった。彼等はシンドバッドの計らいで島で仕事をしているのだ。シンドリアの考古学調査団として。そして彼等のいる島は<トランの民>の島。トランの民は、共通語とはまったく異なる形式を持つ言葉を使う、謎が多い部族だ。
「君は…、」
『莉亜と申します。』
「君がおじさんが言っていた莉亜さんか。おじさんはよく君の話をしていたよ。」
『そうですか…、』
何とも複雑な気持ちだった。王様は私を駒としか思っていない。彼が私を良く言おうとも、この先の利益のために生んだ戯言だ。
「村長の家に着いたよ!迷宮に行くには村長の許可がいるからね!」
村長の家の中に入り、事情を聞くと、ハッキリと断られた。村長の話を聞くと、<第61迷宮ザガン>は攻略者を喰らい、迷宮に近づく者を自ら引き摺り込んでしまうらしい。トランの民も食われたまま一人も戻らないと、彼は悔しげに話す。許可がおりないと攻略どころの話ではない。そう思っていたが、何とか村長は許可をしてくれた。
「<<見とくれ。島のこの市場が賑わっているのはシンドバッド王のおかげなんじゃよ。>>」
「おじさんの…?」
「<<ホレ、そこにシンドリアの駐屯地があるおかげでのう。島の外から商人訪ねてくれる。安全に航海と商売ができるから…、しかも遅れた部族として迫害され、南へ追いやられたとらんの民に、シンドバッド王は努めて対等に接してくださる!>>」
島の市場を案内してくれた村長は誇らしげだった。王様のおかげでこの生活が出来ているのだと。やっぱり王様は凄い人だ。尊敬はしている。尊敬は。
「<<村長!新たに到着した商人三名が洗礼を求めています。>>」
「<<うむ。>>」
商人が市に入るときはトランの銀色の砂でお清めをする。レーム帝国から訪れた三人は洗礼を受けていた。
『!!』
三人が私達の横を通った瞬間にゾクリと悪寒がする。それに、あの三人のルフは黒く染まっている。
『ダメだ…、』
あの三人をここに招いてはいけない。そう直感した。
「リアさん?どうかしたのかい?」
『なんでもない…。ただ少しだけ…嫌な予感がしたの…、』
「…さぁ、<ザガン>への出発は明朝じゃ!」
どうか悪いことが起きないようにと、そう願った。そして翌日、トランの民の案内で迷宮へと向かう。アラジン君、アリババ君、モルジアナ。そして私と白龍君に分かれて船に乗る。私達の船を漕ぐ少女は不安そうな表情で話しかけてきた。
「<<あの…トラン語、わかりますか?>>」
「<<少しなら。>>」
『<<私も少しなら大丈夫だよ。>>』
「<<やはり…昨日見た中であなたたちが一番賢く、四人の長に見えました。お願いしたいことがあります。>>」
『あはは…、長って…、』
「<<そうではないが…願いとはなんだ?>>」
「<<私も一緒に迷宮に連れて行ってください!父と母を助けたいんです…!>>」
「『…!?』」
「<<着いたぞ!!迷宮ザガンがある島だ!>>」
((いざ、迷宮へ))