#煌帝国





煌帝国を滅ぼす。

あの女に復讐を。

その為だけに生きてきた。





「諸君、今日は煌帝国から使節団がやってくる。くれぐれも粗相のないようにしてくれ。」

「「「『仰せのままに。』」」」

今日はいよいよ煌帝国の使節団がシンドリアを訪れる。正直緊張していた。そもそもシンドリアと煌帝国が仲が良いかと言われればそうでもないだろう。ただ一定の距離を置いて上手く付き合っているだけの関係だ。皇子の留学で何が変わるのか、それが一番の鍵だろう。

煌帝国の使節団が港に着く頃、私達も港に向かい、使節団を招く準備をした。アラジン君、アリババ君、そしてモルジアナもその場に訪れた。

そしてついに、煌帝国の使節団がシンドリアに足をつく。後ろの方で頭を下げている為、ここからでは皇子がどんな人なのか確認することが出来なかった。

「煌帝国第四皇子、練白龍です。」

「陛下から話はうかがっている、歓迎するよ。」

「義父の命でなくとも、貴殿にお会いしたいと思っていました。」

「それは光栄だ。その話もゆっくり聞かせてもらおう。」

そんなにピリピリとした雰囲気ではなさそうだ。このまま何も無ければ良いのだけれど、なんて願いもすぐに散った。

「ところで、白龍殿の後ろの貴人はもしや……?」

「あっ!練紅玉姫…、」

「えっ、例のシンドバッド様に気があるっていう?追っかけてきたんだ。」

何やら煌帝国の皇女もいらしているらしい。ジャーファルさんはオロオロとしているみたいだし、対してピスティさんは何だか楽しそうだ。

「お久しぶりですね、バルバッド以来だ!そういえば貴女とは、煌帝国ではお会いする機会が一度もないありませんでしたね。また会えて本当によかった!」

「会う機会が…一度もなかったですって…!?」

何だかだんだんと険悪な雰囲気になってきたみたいだ。ズバンと何かが切れる音がした。何やら向こうの皇女様は怒っているらしい。

「シンドバッドめ!謝ったなら国の為涙を飲んで耐え忍ぼうと思っていたのに…やっぱり許せないわ…!!私と決闘なさいシンドバッド!!乙女の身をはずかしめた蛮行、万死に値する!!」

ああ、何やら王様はやらかしていたようです。皇女様の部下である人が、煌帝国での一件を全て説明してくれた。

ざっくりとまとめると、王様は煌帝国滞在最後の夜、皇女様を襲ってしまったらしい。皇女様は深く傷ついていて、とにかくご乱心だ。王様は記憶を遡っているらしいが、ジャーファルを始め八人将は誰も王様を信用していなかった。

「まったく…聞いてりゃ好き勝手言いやがって…俺が外交の最中に、酒で失態をおかすなどと、お前たちは本当に思うのか!?」

「思います。私たちは、あなたを心底尊敬しておりますが、"酒ぐせ"この一点のみにおいては、まったく信用しておりません。」

ジャーファルさんの話によれば、王様は旅先の村で現地妻が多発していたり、金属器を取られたり…と、聞けば耳が痛くなる話ばかりだ。

「それはその通りだが、今回ばかりはやっていない!!頼む、俺を信じてくれ!!」

「信じられませんよね…。」

「毎度のことッスからね…。」

「酔った王に手を出されかけたという女性からの苦情が絶えません。」

「そうそう、こないだなんてすごいおばあちゃんに手、だしそうだったよね!」

「実は私も一度も手を出されかけたことが…、」

「なっ…んだとぉ…!」

八人将の一部は口々に今までの王様の失態を漏らした。本当に酷いな。

『ああ、そういえば私もキスを強要されたなぁ………、』

「「「えっ!?」」」

ボソッと呟いたつもりが皆に聞こえてしまったらしい。人の隙間から見えた王様は真っ青になっていた。

「お前たち…………、」

まったく自分が信用されていないことに、王様は軽く絶望していた。話は大きく飛躍し、皇女様と結婚という話になってしまった。仕方ないと割り切る臣下たちに限界が来た王様、ヤムさんに魔法で無実を証明してほしいと頼んだ。

「本当にやってないんですね。」

「やってない。」

「本当ですね?私は本当にあったことしか皆に見せることはできませんよ?」

王様に何度も念を押すヤムさん。それはそうだ。ヤムさんが今から行う魔法は本当に真実しか見せることが出来ないのだから。

「じゃあ来てください、王よ。皇女様、あなたも。あなたに見せてあげる。本当は何があったのか。あなたのルフが語る、偽ることのできない真実を…、」



「私の魔法でね。」



((煌帝国))

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