#幸せを望むこと



誰かのために、なんて言ったことなんてない。

ただ自分の為だけに生きてきた。

生温い世界を生きてきたんだ。



さぁ莉亜様、行きましょう。

これでいい。私はこんな運命いらないもの。これでカナンが戻ってくるのなら何でもしてみせる。

莉亜!

莉亜!負けるな!

『王様…?アリババ君?』

小さな小さな声だったけど、私にはハッキリと王様とアリババ君の声に聞こえた。私を呼ぶ声だ。

莉亜様。

『っあ…、うん…。』

ごめんなさい王様、アリババ君。私は貴方達と共に肩を並べることすら出来ないみたい。私は結局弱いままだった。

莉亜様…、泣かないで…くだ…さい…ま、せ…。莉亜…様は…わたく、しの…希望……なのです…、

『!!』

莉亜様?

私はどうして忘れていたのだろうか。あの時カナンが望んだのは、私が憎しみに縛られることじゃない。あの時カナンが望んだのは…、

莉亜様は…ひ、かり…のなか…で…笑ってて…く…ださ…、

『ごめんカナン。私…カナンとの約束を破るところだったね。』

何を言っているのですか?

このカナンは私の妄想だ。私はずっと許さないでほしいと思っていた。皆私を軽蔑して、許さないで欲しかった。じゃないと私はきっと甘えてしまうから。だけど、本当は許して欲しかったの。心の何処かでどうしたら許してもらえるのか考えてた。

『カナンごめんね。私はやっぱりそっちには行けない。』

私を裏切るのですか?

『違うよ。私はカナンを裏切ったりしない。』

ならば何故!

私の目の前にいるカナンは憎しみ、そして悲しみに満ちた瞳をしていた。まるで私のように。私はカナンにゆっくりと近づいていく。私が近付く度にカナンは怯えた表情をした。

『私ね、この世界を旅して、たくさんの人達を見てきた。名声や権力、お金を求めて争う人達や何の力も持たずに巻き込まれて死んでいく貧しく弱い人達。本当は怖かった。目の前で笑ってくれていた人達が呆気なく死んでいくのが。どうしてこんなに簡単に死んでしまうんだろうって思ったの。』

来ないでください。

『でもね、それ以上に怖かったのは、何も出来ず、ただ守られてばかりの弱い自分だった。結局カナンまで私は殺してしまった。ずっと許して欲しかったの。この世界の異変を止めたら、許してもらえるかなって思ってた。』

来ないで、

『でも、私には世界を救うなんて出来ないんだよ。私は王様や他の人達と違ってあまりにもちっぽけな存在だから。ただ…ただね…せめて誰か一人でもいい…!誰かを幸せに出来る存在でいたいっ…!』『カナンが生かしてくれたこの手でっ!誰かを幸せにしたいんだ!!』

まるで莉亜の気持ちに応えるように、周りから白いルフが溢れ出し、真っ暗な空間は消え去っていった。莉亜の両目からは一筋の涙が伝う。

『大切なことを思い出させてくれてありがとうカナン。』

私はまた背中を押されてしまったようだ。私は目の前で震えるカナンの手を握る。その手は冷たく、氷のようだった。

『憎かったのも、悲しかったのも嘘じゃない。だけど、私はそれでも運命を乗り越えられるよ。』

「…、」

カナンは涙を流していた。そして、指先から砂のように消えていく。手からこぼれ落ちていく砂をただ見つめていた。そして完全にカナンが砂になってしまうと、私の目の前に大きな大きな扉が現れる。私はその扉をそっと押した。扉はゆっくりと開いていき、私はその先を進んだ。

私が進んだ先には大きな広間のような部屋がある。そこのど真ん中には金色の杖がふわふわと浮いていた。その杖に近づき、そっと触れるとその杖は輝き始めた。次第に私の目の前に何かが現れ始める。

『誰…?』

【我が名はミシャンドラ。終焉と革命のジン。】

『貴方がウーゴ君の言ってたミシャンドラさん…、』

ミシャンドラと名乗る大きく青い巨人が私の目の前に現れた。彼の額には二つの目、そして頭には羊のような角がある。

「リアさんっ、」

『アラジン君!よかった、無事だったんだね!』

「リアさんも無事で良かった…!」

どうやらアラジン君はずっとここにいたらしい。彼はマギであるし、私の試練だったからだろう。

【莉亜、よく試練を乗り越えた。】

『っ私、貴方にたくさん聞きたいことがあって…っ、』

【わかっている。お前に全てを見せてやろう。】





【全ての始まりと終焉を。】



((幸せを望むこと)!

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