#血濡れた罪
何処までも続く暗闇、暗黒。
それは果てしなく終わりのない人々の憎しみ、怒り、悲しみ。
誰もが持つ闇。
『アラジン君?』
光の眩しさに目を瞑り、次に目を開けた時目に入ったものは何もなかった。真っ暗な空間、自分の姿すら見えない状態だ。アラジン君の名前を呼ぶが、反応は無い。どうやら離れてしまったようだ。これは私が一人で挑まなければならない試練らしい。
『光魔法<フラーシュ>!』
魔法を使おうとしたが使えなかった。そもそも魔力が自分の中から失われたみたいだ。とにかく進まないと何も始まらない。私はあてもなく歩き始めた。
『はぁ…はぁ…っ、』
どのくらい歩いただろうか。途方も無い距離を歩いた気がする。何時間たった?何十時間たった?喉が渇いた。水が欲しい。正直心身共に限界だった。ゴールの無い道を歩いて私は何をしているのだろう。
『あっ…、』
足はすでに痙攣を起こしている。かくんと力は抜け落ち、その場にこけてしまう。
『み…ず…、』
もう限界が来てしまったのか?私はこんなにも体力がなかっただろうか。誰か助けて…、
「大丈夫ですか…?これを飲んでください。」
『…だ………れ……、』
私の問いに答えは返ってこない。這い蹲る私の顎を誰かが持ち、何かを口に入れられる。その直後に広がる鉄の味。
『ごほっ!!…うえっ…げほっ…、』
不快な味に口に入れられたものを吐き出した。しかし口の中にはまだ鉄の味が残っていた。
『げほっ…、何を入れたの…!!』
「何って…貴女が大好きな血に決まっているじゃないですか、」
『ふざけないで!!貴方は誰!?』
「忘れてしまいましたか……?」
徐々に辺りが明るくなり始める。何処か見覚えのある場所だった。そして、私の目の前にいた人物に驚愕した。
『嘘………カナン………?』
「お久しぶりです、莉亜様。」
『嫌だ…ごめんっ…ごめんなさいっ…カナン…私は貴方を…っ!!』
思い出した。ううん、忘れたことなんてない。この場所はカナンが死んだ場所。私がカナンを殺した場所。
私は上半身を起き上がらせた。もう足は限界だったので、せめてその場に座る形になった。
「
何故私を殺したのですか…?」
『ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…、』
思い出したくない。あんな思いするのは嫌だ。私の大切な…っ、
ギュッと目を瞑り、耳を塞いだ。しかし頭にカナンの声が響く。瞼の裏にはカナンが死んだ時の映像が流れる。それから逃げるように目を開けて、耳を塞ぐ手を退けた。
『ひっ…、』
私の手はいつの間にか血で真っ赤になっている。そして、私のそばで横たわるのは真っ赤な血を流すカナンだった。
『ああぁああああぁあぁあ!!』
「
どうして殺したのですか?」
「
私は何のために死んだのですか?」
「
教えてくださいませ。」
「
ね?莉亜様…?」
『やめてええぇええぇええ!!』
「もう見ていられないよ!!君は平気なのかい!?こんなにも苦しんでるんだよ!?」
「……。」
「答えてよ!ミシャンドラ君!!」
八つの瞳が、全てを見下していた。
((血濡れた罪))