#試練の始まり



もしあの時力があれば、

もしあの時倒していれば、

私の大切な人は×××ったのにーーー。





「リアさん?起きてるかい?」

『アラジン君?ちょっと待ってね。今開けるから。』

もう月は高く昇っているというのに、アラジン君が部屋を訪ねてきた。ドアを開ければいつもと雰囲気が違う表情をしたアラジン君が立っている。とにかくアラジン君を部屋に入れて、椅子に座ってもらった。

『どうしたの?こんな夜更けに。』

「リアさんに話さなければならないことがあるんだ。」

『それはとても大切なこと?』

「うん、この先絶対に知らなければならないことなんだよ。」

『わかった。じゃあアラジン君に魔法をかけてもいい?危害を加えるものじゃないから。』

アラジン君がこくりと縦に頷いたのを確認して、彼に音魔法をかけた。これは以前ユナンが私にかけた魔法と同じものだ。

『<もしかしたら誰かがきいているかもしれないから音魔法をかけたの。今話しているのは私とアラジン君にしか聞こえない。>』

「<ありがとうリアさん。そうだなぁ、何処から話そうか。まず、あの聖宮で会ったことを覚えてるかい?>」

『<うん、私がアラジン君と会うまで失くしてた記憶だよね。>』

「<そう。ウーゴ君は君にウーゴ君の友達を探して欲しい、そう伝えた。でも、記憶をなくした上になんの手掛かりも無いリアさんには絶対に不可能だったんだよ。ウーゴ君はまずリアさんに十分な力をつけて欲しかったんだ。だから最初はシンドバッドおじさんと会ったよね?>」

『<そういうことだったんだ…、王様と会ったのは私が力をつけるためなんだね…、>』

じゃあ王様と会ったのは運命だったんだ。奇跡じゃなかった。そう思うとほんの少しだけ悲しくなる。

「<そして、僕はリアさんを導くためにリアさんに会わなければならなかったんだ。リアさんが会わなければならない人に会わせるために。>」

『<ミシャンドラさん…だよね。>』

「<そう。僕の力でしか導けないんだ。でも、きっと会うためにはリアさんが辛い思いをしなければならない。それでも会いに行くかい?>」

私は真実を知らなきゃいけないんだ。私がここに来た目的も、私が本当にやらなければならないことも。答えは最初から決まってるよ。

『<うん。行きたい。アラジン君、連れて行ってくれる?>』

「<勿論だよ。じゃあ、行こう。…ソロモンの知恵!!!>」

アラジン君の額には八芒星が浮かび上がる。そしてその瞬間に私の右目もカッと熱くなるのを感じた。ルフが私達の周りに密集し、辺りが光に包まれる。

この時の私は知らなかった。ウーゴ君の言っていた「ミシャンドラ」さんに会うのがどれだけ辛いことなのかを。




((試練の始まり))




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