*幸村君のキャラが掴めてない(^ワ^)



「…おなかへった、」
「………多分、そろそろ昼ご飯だと思うんだけど……あ、飴ならあるよ」
「あめ?」


今日は俺の家でボウヤ、越前君と所謂勉強会をしている。
テストというのはどこも大体同じ時期にやるようで、お互いテスト週間という事で部活がなく俗に言うお家デートというものも兼ねて俺の家で勉強会をすることになった。
俺は勿論、越前君も酷い学力をしているわけでは決して無いが、帰国子女である越前君は国語が苦手なようで、先日会った際に、普段上からな発言が多い彼にしては珍しいちゃんとした物言いで今日のこの勉強会を頼まれたのだった。

手のかかる友人や後輩、それに妹もいる俺は勉強を教えるのは苦手ではないし多分下手なわけでもないと思う。
それに可愛い可愛いと常に猫可愛がりしている恋人に珍しく丁寧にお願い事をされて嫌だなんて断る理由があるわけもなく俺は笑顔で了承した。
勉強会という堅苦しい名目ではあるが、少しでも恋人と一緒に居れる機会をそう易々と逃すわけがないのだ。

そしてやって来た本日午前10時。
越前君が俺の家にやって来るのはこれで何回目だろうか、そろそろ両の手の指では足りなくなるくらいではないだろうか。
お互いなかなか簡単に行き来出来る距離なわけではないのだが、彼は俺の家に来る事を好んでいるのか予定さえ合えば俺の家に来てくれる。

彼は普段礼儀知らずな物言いや発言が目立ってしまっているが、決して礼儀知らずな子ではなく、俺の家族とは上手くやっているようで俺の家族からの評判はとても良い。
ちょっと人見知りをする俺の妹も珍しく彼にはなついている。
そう彼に伝えたら、彼は怪訝な表情を浮かべ「妹さんに、なつかれてはないと思うっすけど…」と言っていたが、真田がうちへ遊びに来る時は毎回部屋から出て来ない旨を伝えると彼はひとしきり笑った後「…アンタの家族に好かれて悪い気はしない、かな」と照れながらも言ってくれた。
そんな彼が愛おしくてその日は結局日帰りから泊まりへと予定を変更させてしまい、怒った彼は暫くまともに連絡を取り合ってくれなかったのだが。
けれど、それでも彼はまた予定さえ合えば俺の家へと来てくれる。
まだ、家族には「仲の良い友人」として紹介しているが、その内カミングアウトしてもいいかもしれない。


越前は国語が苦手だ意味が分からないと言うけれど、日常会話などでは使わない国語ならではの日本語に対する知識が少ないだけで彼は理解力が低いわけではない為、教える事もそう多くなく最初の方に一通り説明したらあとは特に聞かれるでもなく辞書を片手に自らの力だけで一生懸命問題を解いていた。
伏せ気味な顔から覗くまつげや薄く開いた唇にちょっと邪な念を抱いたのは言うまでもないが、一生懸命文字を綴る彼の邪魔をできるわけもなく、俺も自分の勉強へと身を乗り出した。

そして現在に至り冒頭へと戻るわけなのだが、どうやらお互い随分と勉強に熱中していたようで、越前のポツリと漏らした声に反応し顔を上げると2時間の時が過ぎていて、自分はともかく彼が2時間も集中力を切らさずに居た事を褒めてあげたい気持ちでいっぱいだった。

空腹を訴える彼にご褒美がてら何かお菓子を与えたいが、時間が時間。
もうすぐ昼ご飯となるだろう。
先程言った通り越前君を気に入ってる俺の母さんがいつもの食事に比べ、腕に縒りをかけて料理を作っている事は目に見えているので、ここで下手にお菓子を与えたら越前が全部食べきれないかもしれない。
…とは言っても礼儀を知っている越前がどんなに胃が満腹を訴えようと俺の母さんの料理を残す事はないだろう。
そんな展開に陥らない為にも今ここで彼にお菓子を与えるのは得策ではない、そもそも本当にもうすぐ昼ご飯となるはずなのだ。
だが彼にどうしようもなく甘い自分が、我慢しての一言で済ませられるはずはなくキョロキョロと自分の部屋を見渡した結果、思い出したのが先日父さんの同僚から頂いたお土産の品である。

「そう、先日父の同僚に青森土産で頂いたものがあってね」
「ふうん」
「ほら、これ。りんご味なんだけど、食べるかい?」
「うん、ちょーだい」

父の同僚から頂いたそれは青森土産というだけあって、特産品である林檎を象った可愛らしいコロコロとした林檎味の飴だった。
貰ったはいいがなかなか飴を食べる機会がなく、いっそのことお菓子好きの友人にあげてしまおうかと考えていた矢先だったので彼が少しでも喜んでくれるというならこちらとしても喜ばしい限りだった。
俺の手の平から一粒飴を奪うと彼はヒョイっと口に飴を放り投げた。

「美味しいかい?」
「まあまあかな」
「それは良かった」

口ではまあまあとの微妙な評価を下していても彼の表情を見る限り、これはなかなか彼のお口に合ったようだった。
口の中でコロコロとあめ玉を転がしながら机の上に散らばった教材達の片付けをしていく越前君。
どうやら国語の勉強は終わったようだ。
彼が気に入ったのなら今日はこの飴を持たして帰してあげようかな、なんて思いつつも俺も一つ食べてみようと彼の口に入ってるものと同じものを袋から一つ取り出した。
手の平の上にチョコンと鎮座するそれを見つめ俺はフと思った事を口にした。

「この飴、まるでボウヤみたい」
「………は?」

目を点にした越前君の口の中からガリッと音が聞こえた。
コロコロと飴を転がす彼はとても可愛かったのに、思わず飴を噛んでしまったのだろう。
言うタイミングを謝ったなと少し後悔した。

「…なに、それ」
「ん?そのままの意味だけど?」
「…赤い服着てるから、ってこと?」

俺の意図が理解出来なかったのか訝しげな顔で俺を問う。
確かに今日の彼は赤を基調とした服を着ているが別にそういうわけじゃない。
彼は一度噛んでしまった事で諦めが付いたのかガリガリと音を立てながら口の中のあめ玉を消費する。

「そうじゃないよ」
「じゃあなに」
「フフ、そう怒らないでよ」

俺は口にあめ玉を放り込むと、机をはさんだ状態にある彼の顔をぐいっとこちらへ引き寄せた。

「ちょっ……んんっ…」

眉間に皺を寄せギュっと瞳を閉じ耐える彼の表情を楽しみながらどんどん口づけを深くしていく。
そうして彼の口内を充分堪能したあと、置き土産がてら自分の口にあったもうほとんど小さくなった飴を彼の口に残して唇を離した。
大丈夫かい?と声をかけると、肩で息をする彼がキッとこちらを睨んで来た。

「…っいきなり、なんなの…!」
「なにって、君がこの飴に似ている理由を実証してあげようと思っただけだけど?」
「…は?」

未だ分からないと言う表情を浮かべる彼に、ほら、見てごらん?と彼の正面自分の真後ろにある姿見を身体をずらし指を指した。

「ほら、真っ赤だろう?君の顔。まるでこの飴みたいだと思わない?」

彼の怒号と同時に、昼ご飯の完成を伝える妹の呼び声が聞こえた。


なぞなぞです
その答えは何でしょう



(ボウヤ、機嫌を治してくれないかな?)
(今日もとっても美味しいです、おばさん。)
(ふふ、ありがとう。おかわりもあるからいっぱい食べてね)
(越前さん越前さん、)
(ん?なに?)
(今日のご飯ね、私もいっぱいお手伝いしたんだよ)
(そっか、偉いね。ありがとう)
(えへへ、いっぱい食べてね?)
(そこ、凄い微笑ましいけど俺を仲間はずれにするのはやめてくれないかな?)
(…ご飯食べ終わったら俺と二人で遊ぼっか?)
(本当?わーい!越前さんだいすきっ!)
(あらあら、うふふ)
(…ボウヤ、今日泊まっていきなよ)


*****

飴を口に含んだままのキスって、危ないんじゃないかなあ…
なんか下手したら喉に詰まりそうだよね、って思った。
りんご飴食べたい。
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