「ごめぇん春太くん!」

「…だ、いじょうぶだよー」


笑顔が引きつるのが分かる。彼女の肩を抱く手が強張るのが分かる。この女、顔は可愛いけど馬鹿だと毎度思ってたけどこんな馬鹿だったとは思わなかった。まぁ俺はそういう馬鹿な女が好きなんだけど。好きっつか楽なんだけど。


「でもねぇ、ほんとかっこいいんだよぉ!あ、勿論春太君の方がかっこいいけどぉ」

「ありがとー」


見慣れない電車に揺られながら、ユミちゃんは自分の膝に鏡を置き、メイクチェックをしている。元々多いつけまつげをまた更にマスカラで濃くしていっている。女子こえぇ。化粧直しをしているユミちゃんは俺なんかお構いなしにルンルンだ。何でも、あちらからデートに誘ってきたのに、試合が入ったから見に行くらしい。しかもお目当ては試合自体では無く、そのプレイヤー。ユミちゃんのお目当ては“おしたりくん”と言って、今時珍しい丸眼鏡の下に秘めた顔はキリリと整っており、長身でちょうどよく伸ばされたロン毛で、低い声に関西弁だとか。以上、ユミちゃん談。なんだよ丸眼鏡にロン毛に関西弁って。只のお笑い芸人じゃねぇか。この子体の相性もいいし、上手いから気に入ってたのになー。男連れて他の男の応援はねぇだろ。


「それでぇ、今日の対戦校は立海っていうんだけど、そこの人達もめっちゃかっこいいの!」

「へぇー…、…えっ!?」

「どうしたのぉ?」


ユミちゃんの上目づかいを見つめながら、内心焦る。さっきから口に出していた“氷帝”ってどこかで聞いた事があると思ってたんだよな…。じゃあもしかして、今、その“氷帝”に向かっていて、ユミちゃんが見たいという試合は“立海”と“氷帝”の試合…。
うわ、最悪だ、と思わず口の中で呟いた。







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キャラ出てなくてすみませんw

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