すきだなぁと思う。
わが船の船長は偉大だ。
このグランドラインで1番、いやこの世界で1番偉大だ。
俺は仲間の中で新入りで、過ごした期間は1番短いけどそう感じる。
寛大で、仲間を大切にして、自分の道を貫いていて。
自分の夢を追い続ける人。
何のとりえもないこの俺に笑いかけて、手を広げてくれた人。
俺の恩人であり、大切な人だ。
すきだと思う。でもそれは友愛とも恋愛ともなにか違う愛情。
自分の中でも良く分からないのだ、まだ。
区別が付いていない。複雑に絡まって、答えを見出せない。
それに俺も船長も男だし。恋愛は違うと思う。
女の子好きだしなぁ、俺。


「なにボーッとしてんのよ?」
「ナミさん」
「ルフィのこと見つめながら凄い馬鹿面してたわよアンタ」
「いやぁ、俺女の子好きだよなぁって。」


声を掛けてくれたナミさんにへらりと笑いかけると、馬鹿なの?と一蹴された。
そんなナミさんも素敵です。口に出すとサンジがうるさいから言わないけど。
ナミさんはため息を吐くと、あの馬鹿達にご飯出来たから来いって言っておいて、とそのまま船室へと戻って行った。
俺は視線を戻し、船長とウソップとチョッパーが騒いでるのを見る。
少しだけ眺めてから腰を上げる。


「せんちょー!飯ですよー」
「おお!めしいいぃ!!!!」
「飯だ飯ー!」
「早く行かねーと無くなる!」


俺が一声かけると、船室に向かって駆けてくる3人。
俺は思わず笑みを漏らしてしまった。この船の男衆は大食いばっかだなぁ。
サンジの飯が旨いっていうのもあると思うんだけど。
すると、いつもなら真っ先に飯ー!と騒ぎながら船室に行くはずの船長が俺の前で立ち止まる。
なにか考えているような顔で俺の顔を見ていた。どうしたんだろう、目の前にご飯があるというのに…熱でもあるのか船長。
船室の扉は閉められ、海風と微かに漏れるみんなの声だけが聞こえる。


「船長?どうしたんですか?ご飯ですよ」
「んー。なぁルイト、手出してくんねぇ?」
「え、あ、はい。どうぞ」


手を出すと、そっと握られた。
普通の握り方じゃなくて指を絡めるようなものだった。びっくりした。心臓に悪い。
く、と船長が軽く力を込める。俺は握り返す事も出来なくて、ただただ身体が熱くなっていくのがわかった。
なんだこれ。船長、どうしちゃったんだ?俺、どうしちゃったんだ?
心臓の鼓動の加速が止まらない。
やがて、船長はにっこりと俺に笑いかけた。


「やっぱ俺ルイトの事好きだ」
「…お…れも船長の事、すきですよ」
「おう!知ってる!」


さぁ飯だー!と言いながら、俺の手を離し船室へ入っていく船長の背中を見守る。
船長はなにがしたかったんだ。野郎の手なんか握って、楽しいだろうか。それにしても俺はどうしたんだ。
汗をかいた掌を服で拭う。どくどくどく、と加速は止まらない。
船長は俺の事を好きだと言った。俺も船長の事すきだと言った。

俺の“すき”はどんな、好きだ?


「ああああああ船長のばかあああああ」


澄み渡る空に向かって叫ぶ。
なんだなんだと船室からみんなの声が聞こえてくる。
まだ、その答えは出さない事にしよう。
さっきのドキドキは俺だけの物にしよう。
確かに形取られた“すき”が出来るまで、曖昧なままでいよう。
船長に“好き”と言えるまで、待っていよう。




純情なんですみません
(まだ貴方を純粋にすきでいたいんです)



101128.





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