「白石、蔵ノ介?」
「おん。」
「…が?」
「好きなんやろ」
「は?」


いきなり現れたイケメン君に急に自己紹介をされ、「俺の事好きなんやろキラーン」なナルシスト発言をされました。お母さん助けて。つーか、この人誰。


「こんな所でとぼけなくてもええんやで、涙人」
「いや、とぼけてねーし。お前誰だし」
「恥ずかしがっとんの?かわええなぁ」
「恥ずかしがってねーから!お前頭大丈夫!?」
「頭?頭ん中は涙人でいっぱいやで?」


にっこりと、そこらの女の子が頬を染めるような笑顔を浮かべるイケメンを訝しげに見上げる。分かった、こいつ変態だ。それか、冗談言ってる悪ふさげが過ぎたオタンコナスか。…いや、見る限りこいつの目は真剣だ。やっぱ、変態だ…!本物の変態が居る!逃げなきゃ!


「じゃっ」
「涙人!?」


引き止める声を聞くわけが無く、俺は変態に背を向けると、今世紀最大速度で走った。これ以上あの変態と居たら、色々危ない気がする。いや、絶対危ない!現帰宅部だとしても、元サッカー部の俺の俊足(小5までだけど)なら、あいつを振り切れただろう。荒い息で、肩を上下させながら後ろを振り返ると、汗1つかいていない息1つ乱れていないイケメン君が目の前に居た。俺は目を見開き、びっくりし過ぎて声は出なかった。


「急に走ってまうからびっくりしたわ」
「おま、な、ん」
「走る涙人も可愛かったで」


恍惚に笑うシライシにぞわりと鳥肌が立った。きもちわるい、こいつ。男の俺のどこが可愛いんだよ。無意識に後ずさると、がっしりと左の二の腕を掴まれた。思わず「ひっ」と情けない声が口から漏れた。


「ずっと、こうやって涙人と話したかったんや」


するり、と手が腕を撫でながら掌の方へと下がっていく。俺は鳥肌を立てたまま、動けないでいた。シライシの目に、殺意にも似たどす黒い感情が宿っていたから。その目に見つめられて、背中に冷や汗が伝うだけで、逃げようにも逃げられなかった。


「な、これからはずっと、一緒やな」


恭しく取られた左手にシライシは顔を近付けると、べろりと薬指を舐めた。




最初のピリオド
(最初の出会いは)
(俺の終わり)


110922.
きもちわるい白石が書きたかっただけ

title by 驕児





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