「翔は那月の事好きだろ」
「んあ?」
「だろ?」
「…まぁどっちかと言われれば、な」


突拍子の無い質問にどぎまぎしつつもそう答えられた自分に拍手してやりたい。しかしなんでこいつは大事な卒業試験の課題をやってる時にこんな事尋ねてきたんだろうか…。お前の楽譜が出来ないと俺どうする事も出来ねぇのに。卒業試験は間近に迫って来ている。こいつには危機感ってもんがねぇのか。


「…俺は?」
「…は?」
「俺の事は好き?」
「え、ちょ、」
「俺と那月、どっちが好き?」


真っ黒な目が俺に問う。俺は涙人のその目が好きだった。那月はもちろん好きだ。うざってぇしむかつくけど、友人として好きな方だと思う。でも、涙人は。違う。


「そ、れは…」
「やっぱり、同室の那月の方が好きか?」
「いや、それはっ」
「それは?」


近付いて来る涙人に鼓動が早くなり、顔に熱が集まってくるのが分かる。そんな泣きそうな顔すんなよ。お前の事は好きだよ。でも那月とは違う好きだから。俺は涙人の事、恋愛対象として好きだから。そんな迂闊に好きだなんて言えねぇ。こんな女々しい自分が嫌だ。


「っ…言えない」
「…なんで?」
「それは…色々、あるから」
「じゃあ翔は俺の事嫌い?」
「ばっ、そんな事ある訳な」


眉間に皺を寄せまたもや泣きそうな顔をして聞いてきた涙人に思わず怒鳴ろうとすると、言葉の途中で唇を塞がれた。状況がよく分からないまま、涙人の体重に押されそのままベッドに倒れ込んだ。目の前には目を閉じている涙人。唇を塞ぐ柔らかな何か。今、何をされているのか分かった瞬間、更に混乱した。俺、もしかして、ちゅうされてる?離れろと手で胸をどんどんと叩くが、全く相手にはして貰えず、更に角度を変え口づけを深いものにしてくる。俺はもう何が何だか分かんなくなった。何で涙人はこんな事してんだよ。つーか、やばい、うまい。流されそうになり、思わず目を閉じそうになったその時、ぬるりとなにかが口内に入り込んできた。俺は思わず涙人に思いっきり、頭突きを食らわせた。舌噛んだいてぇ。


「おまっおま、涙人、なにすんだ!」
「頭突きとか痛いよー翔」
「お前がいきなり、んな事してくるからだろ!馬鹿!」


唇が離れた瞬間、俺は涙人から離れようと後退り、涙人を指差しながら真っ赤な声で怒鳴った。一方涙人は悪気も無く、俺が頭突きした事に対してほっぺを膨らましていた。かわい…じゃなくてふざけんな!こっちの気も知らないで!


「だって翔は俺の事嫌いじゃないんだろ?」
「あ?…まぁ、そうだけど…」
「じゃあ、いいじゃん」
「いや、よくねーよ!」
「なんで?嫌いじゃなきゃいいじゃん」


きょとんとする涙人に俺は何も言えなくなる。なんか俺だけ意識してるみたいで恥ずかしい。火照る顔を隠すように片手で顔を覆い、ため息を付いた後あっそと返事をすると、涙人は嬉しそうに笑った。俺がその笑顔に弱い事を知ってて笑うなら、お前は確信犯だ。



赤い顔を手で隠す翔にバレないようにほくそ笑む。あー翔ちゃん可愛いな。俺の事好きなのバレバレだし。翔ちゃんが俺も翔ちゃんの事が好きな事に気付くのが先か、俺が翔ちゃんに手出しちゃうのが先か。どっちが先なんだろうかね、鈍感翔ちゃん。





確信犯は笑う
(君の大好きな笑顔を浮かべて)



0920
スランプ過ぎる
翔ちゃんがお相手だと自然に攻主になってしまう原理こあい





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