▽
出来るだけ、呼吸をしないことにした。
酸素は受け付けず、二酸化酸素も出さない。
くるしいけど、息をしたくなかった。
酸欠で、頭がくらくらする。
視界がぐにゃりと歪む。
ああ、俺も死ねるかなぁ。
「なにしてんだよぃ!!?」
いきなり肩を掴まれ、驚いて息を吸ってしまった。
ああ、死ねなかった。なんで俺の邪魔するんだよ。
ごほごほと咳込みながら、まだ俺の方を掴んでいる奴を睨む。
何するんだよ、マルコ。
「死ぬつもりか!?」
そうだよ。
息をしないんだ。
息を止めれば死ねるんだ。
酸素を吸わず、二酸化炭素を吐かなければいいんだ。
とっても簡単でしょう?
「ふざけんな!」
次は頬を殴られた。
その衝撃で、ぐらりと身体が傾いた。
あーあ、倒れる。
しかし、衝撃が来る前にマルコに受け止められ、そのまま抱かれる。
殴ったり、抱きしめたり、忙しい人だなぁ。
「…っお前まで逝ったら、俺は、どうすればいい?」
マルコ。
それじゃあいっしょにしのうか。
耳元で、馬鹿野郎と怒鳴られた。
うるさいうるさい。
鼓膜が破れちゃうじゃないか。
それに俺は馬鹿じゃないよ。
「親父と、エースがそんなことして喜ぶと思ってんのかよぃ!?」
思考停止、停止停止停止
××と、×××がそんなことして喜ぶかって?
知らないよ、真っ白だ。
頭の中が真っ白なんだマルコ。
何にも考えられないんだ。
とりあえず死にたいんだ。
この世は俺にはもう鮮やか過ぎて、こわいんだ。
もう、俺の前に立つ、あの人たちがいないんだ。
俺を世界から、守ってくれる人、いないんだ。
「おれもいっしょにいきたかった。」
なんで、置いていったの。
俺を抱きしめる腕の力が強まった気がした。
離してよ。
俺を、ここから、連れ出して。
喪失した道標(右も左も、何も分からなくなってしまったよ)
101127.
偉大なる親父と大好きな兄貴を悼む。
七瀬