庭いっぱいに咲いた百合の花が揺れる。きついほどその匂いに苦笑いを浮かべる。きっとあの馬鹿が馬鹿みたいに彼女に送ったのだろう。額に青筋を立てる赤毛の彼女の顔が容易に浮かぶ。それを見て何が何だか分からないときょとんとする眼鏡の彼の顔も。キィと庭の柵の軋む音をたて、そこから出た。むせかえる程の百合の匂いに耐えられそうにない。チャイムを押す事は無く、玄関に届け物と手紙を置いて、家を仰ぎ見てからその場を去った。ゆっくりとした歩みからいつの間にか全速力で走っていた。どくどくと心臓の高鳴りが身体に伝わる。耳のすぐそこで鳴っているみたいだ。溢れそうな涙をどうにかしてこらえる。角を曲がってそのまま駆け抜けようとすると誰かに腕を掴まれた。


「ス、ネイプ…」

「何故わが輩を呼んだ」

「来てくれたんだね、」

「質問に答えろ。」


腕を掴んでいる手に力が籠もる。俺はそんな彼を落ち着かせようと微笑みかける。が、逆効果だったようで思いっきり眉を顰められてしまった。まぁ…そこはスルーして。


「君なら、大丈夫だと思って。」

「…何の事だ?」

「スネイプ、君は世界で1番リリーが大切?」


俺の問いにスネイプは大きく目を見開いた。至って真剣な顔の問いに動揺しているようだった。スネイプがリリーの事を好いている事なんてホグワーツに居た時から知っていた。いや、その前からか。ジェームズと付き合い始めた時なんか、部屋に籠もりっぱなしだったらしいし。だからその気持ちを俺は利用しようとしている。でも、スネイプもきっと分かってくれる。力になってくれると思うから。


「なぁ、リリーの為に命を捨てられる?」

「………、あぁ」


スネイプは掠れた声で小さく、頷いた。それを見届けると、俺は深呼吸をする。全部言わなくちゃならない。次こそは救わなければならない。俺の大事な人達を大切な人達を守らなければならない。ホグワーツに居た頃のようにみんな仲の良いあの空間を。親友の家族を、愛しい人の子を。未来を知っている、2度目の人生を迎えるこの俺が。


「今から話す事はこれから、起こる事だ。よく聞いていて」


次こそは、みんなが幸せな未来を。



終わらないエンドロール
(何度でも繰り返して見せる)



110720_
短い。一応ジェームズ夢です。
親友=リリー
愛しい人=ジェームズ



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -