柔らかな感触が唇を塞ぐ。視界いっぱいに広がるのは端正に整った顔。特徴的な色素の薄い銀髪が俺の額をくすぐる。今起こっている状況を俺の馬鹿すぎる脳では処理しきれなくて、ようやっと唇が解放された時自分がなにをされたのか理解したのだった。俺は目の前の男にキスされたのだ。


「に、仁王、ちゃん?」
「沢山の女と付き合ってる割りにはそんな上手くないの」
「いやいやいや!そんな事ない!とろけそうなキスが売りですから!」
「ふーん、じゃ、してみんしゃい」


にやりと悪戯っぽく笑った仁王がまた近付いて来る。え、してみんしゃいって仁王ちゃんに俺がするってこと?え?仁王ちゃん男、だよね?俺の顔をのぞき込むように顔を近付かせてきた仁王ちゃんは動き出さない俺にしびれを切らしたのか、自ら唇を重ねようとする。反射的に自分の手で仁王の口を抑える。あ、っぶない。だって仁王ちゃんと俺がキスする意味じゃね?俺別にそっちの気無いし、仁王ちゃんだってそうでしょ?今まで付き合ってた女の話してたんだし。なのに、なんで?なんで仁王ちゃんは俺にキスしたんだ?馬鹿だから全然わかんねえ。仁王ちゃんが何考えてんだか、さっぱり。距離を取ってから塞いでいた手を離す。仁王ちゃんはつまらなさそうにこっちを見ていた。


「あの、仁王ちゃん何したいの?」
「ちゅう」
「そんな可愛い子ぶられても意味ないよ」
「じゃから、お前さんのキステク」


肩をすくめ、そんなのも分からないのかというような態度。これって俺がおかしいの?友達にキステク披露するのって普通の事なの??あ!だったらてきとーに女の子呼んでキスすれば良くね?それだったら俺の自慢のキステクも見せれるし、あわよくばそのまま本番いけるかもだし。俺ってばあったまいいなぁ!


「じゃあ女の子呼ぼーよ!」
「…はぁ?」
「におーちゃん3Pとか出来る人?」
「お前さん…ほんっとゆるゆるじゃな」
「ん?なにがぁ?」
「分かっとらんし」


はぁとため息を吐いた後、大きな音で舌打ちをする音にびくりと体を小さく震わせる。機嫌悪くなった?やっぱ3P嫌なのかな…。携帯を弄くる指を止め、ちらりと仁王ちゃんの方を見るとこちらへ向かって来て携帯を奪い取られた。え?と俺がびっくりしている間に無造作に閉じられ、どっかに放り投げる。背後の方で何かが壊れるような嫌な音がした。


「ちょ、仁王ちゃん何すんの!けいたいっ」
「もう面倒くさいのう。遠回りは止めじゃ」
「とおまわり?なにが?」
「涙人、」
「ん?てか名前、!」


二度目のキスは少々乱暴で、唇と唇をただ重ねるだけの儀式のようなもの。離れた唇からじわりじわりと甘美な熱が顔全体に広がっていく。胸ぐらを掴まれたまま、間近にある仁王ちゃんの顔を見つめる。同じ位の身長だからか、いつも相手をしている女の子達よりもずっと顔が近い。長い睫毛に覆われた瞳は欲にまみれていて、その欲にあてられて俺も何だか変な気分になっていく。仁王ちゃん、もしかして、俺に欲情してんの?え まじで 俺 掘られる?


「涙人、ヤらせろ」


紡がれた言葉をちゃんと受け取る前に荒々しい口づけが始まる。うわ、仁王ちゃん、俺より上手いかも。てゆーか、俺がちで掘られんのかな…まぁ、その時はその時かなぁ。痔になんないといいけどなー。
ぼんやりとしてきた頭でそんな事を考えながら、仁王の首に両腕を回した。



キスする相手を間違えました。
(とろけそうなキスってこういう事)



110627.
こんな頭も下半身もゆるっゆるな
馬鹿で流されやすくて馬鹿な
ちゃら男が大好きです。

七瀬



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