「ルフィばっかずるい」


久し振りにあった同い年の兄がもう1人の兄であるエースに会ったという。ニコニコと笑いながら話をするので羨ましくなって殴った。そしたら伸びる腕で殴り返された。いつものように喧嘩になりそうになった所をルフィの仲間達に止められた。その後の宴会で俺とルフィはいつものように仲直りをして、昔の話やエースの話をした。懐かしくて、俺はその頃の夢を見た程だった。
俺がエースとルフィに出会ったのは7歳の頃。もうその頃には2人は仲が良く、最近もう1人の兄弟を失った事もあってか、よく置いてかれる事が多かった。ルフィは俺を気にしてよくチラチラとこちらを見ていたけれど。エースは俺の存在なんて無いかのように振る舞っていた。俺自身はというと、親兄弟を亡くしたばかりで、慕っていた兄が居たからかエースを兄と重ねていた。だからエースの事が気になって仕方なかった。だから、2人の姿を見掛けると見えなくなるまで追いかけたりしていた。俺がしつこいのもあったせいか、1ヶ月もすれば3人で森を駆け回っていた。
夢から覚め、薄く瞼を開く。視界いっぱいに広がる満天の星。起き上がり周りを見回すと気持ちよさそうに寝ているルフィとその仲間達が居た。ああ、お前はこんなにも良い仲間に恵まれているんだな。エースはどうだろう、白ひげに入った事は知っているけど。俺は点々と船を変え、この海原を漂い、夢も尊敬するものもなく、ただ海を渡るのみ。特に海賊になる気なんてなかったんだ。ただ、キラキラとした瞳で“海賊”を語るエースとルフィがうらやましくて。だから、漠然とした思いで2人の後を追ったのだ。
腹を出して寝る兄に苦笑しながら自分の上着を脱ぎ、掛けてやる。


「なぁ、ルフィ。俺は卑しい人間なんだ」


夢を語る2人が羨ましかったのではない。エースと楽しそうに話すお前が羨ましかったのだ。俺もエースと楽しく話したかった。あの眩しい笑顔を向けて欲しかった。大好きな兄に嫉妬心を抱くなんて。自分はなんて愚かなのだろうか。それに、尊敬する兄に恋情を抱いてしまっただなんて、なんて俺は醜いのだろうか。エースごめん。大好きなんだ。“大好き”なんだけど、その言葉はもう伝えられない。もう意味が違うから。会いたいけど会いたくない。会ってしまったら、この自分のどす黒い感情が爆発してしまうような気がして仕方ないから。


「俺も、ルフィみたいになりたかった」


良い仲間に囲まれて、偉大なる夢を持っていて、エースに愛されて。エースのことが“兄”として大好きで。
俺は、お前になりたかったよ。




だから君に嫉妬する
(俺が持っていない物を持っていて)
(俺の持っているモノを持っていない)




(放浪様提出)
七瀬




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