「俺、さ…ゲイなんですよね」
「…は?」


銀さんに大事な話がある、と話を持ち出すと鼻をほじくりながらんー?とジャ●プから目を離さずに返事をする。汚いし、俺はすごく大事な話をしようとしてんのにこの人は…。でも反抗するとめんどいし怖いので俺はそのまま話をする事にした。ソファーに座ったまま、太ももに両手を置き深呼吸をし、駄目上司基銀さんに向かってそう言い放つ。


「ずっと言おうと思ってたんだけど、なんかタイミング掴めなくて、」
「は?え?ちょ、ゲイってお前…あれだろ、男が男を好きっていう…」
「やっぱり引きますか?」


自嘲にも似た笑みを浮かべると銀さんは俺から目を逸らす。普通そうだよな。だから俺は言えなかった。


「俺、ここが好きだから言えなかったんです。でも好きだからこそ言わないといけないと思って。」
「…全然気付かなかったんだけど」
「そりゃそうですよ。そう振る舞ったんですもん」


笑いながらそう言うと銀さんは神妙な顔をして、頭を掻きながらこちらに来て反対側のソファーへと座る。向かい合わせになった銀さんを見上げ、目が合うと少しビクつかれた。おいおい、地味にショックだぞ白髪。


「それ、いつからだったの」
「あー男を好きになったのは2年前位ですかね。それまでは普通に女性も好きでしたよ」
「…今は女無理なの?」
「無理っつーか、勃たないんですよね」


ええええと銀さんが仰け反る。だって本当の事だからしょうがないだろ。2年前に男を好きになって、身体を重ねてから女性の裸を見てもピクリとも動かなくなった。あん時はまだ曲がりなりにもノーマルだったからびっくりしたけど。今ではもう仕方ないかなぁと。


「もしかして、俺危ないんじゃね!?」


バッと自分を自分で抱き締める銀さんに吹き出す。男だったら誰でもいいって訳じゃないっつの。


「あははっ、大丈夫ですよ。銀さん俺のタイプじゃないですもん」
「タイプとかいんの?」
「んー、真選組の沖田さんとか結構好きですよ」
「お前…ドMだったのか」
「そういう意味じゃねええええ」


引かれた目で見られ、思わずつっこむ。沖田さんの性格じゃなくて容姿が好みなだけで、俺はMじゃない!…多分。
俺はごほんと咳払いをすると、真剣な面持ちに戻す。銀さんはそんな俺に少しだけ身じろいだ。この話はあまり持ち出したくなかったのだけれど、カミングアウトしたならばやっぱり問わなければならない。


「銀さん、俺の事気持ち悪いなら解雇して下さって結構ですから。」
「…解雇?」
「はい…。ゲイが自分の近くに居るなんて嫌でしょう?」


以前、偶々男とホテルに入っていく所を同僚に見られ翌日即クビにさせられた事もある。ゲイとカミングアウトして気持ち悪いと離れて行った友達も少なくは無い。自分でも異常な事とは理解している。でも、もうどうにも出来ない事だから。それが自分の一部となっている。だからこそ、大事な人達には伝えなくてはならないと思う。そこで拒絶されたならば、それまでだ。


「それに一緒に暮らしてる身ですし。別に遠慮しなくていいんですよ、出て行く覚悟は出来てますから」


そう笑いかけると、銀さんは眉間に皺を寄せた。何だか不機嫌そうだ。やっぱりゲイだから怒ったのだろうか。気持ちが悪いと罵られるのだろうか。
しかし、銀さんの放った言葉は俺の予想だにしないものだった。


「ゲイでも何でも、お前はお前だろ。ここに居たきゃ居ればいい」


居たくなきゃ別だけどな、と言う銀さんを凝視する。それって…ここに居てもいいって事だよな?俺、まだ万事屋に居てもいいんだよな?嬉しい。
俺は立ち上がり、銀さんに抱き付いた。


「銀さんありがとう!タイプじゃないけど抱かれてもいい!」
「タイプじゃないけどは余計だろーが」


口ではそう言いながらもポンポンと背を叩いてくれる銀さんにトキメいてしまったのは内緒だ。




銀色イリュージョン
(貴方に惚れるのもそう遅くは無いかも)



110509.

この後神楽にきもいって言われて
落ち込んでるといい(笑)

Title by 魔女さん
七瀬





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