ジュダル/男主



絢爛豪華な扉や壁。廊下に置いてある壺も私にはどの位の価値があるのか分からない。きっとここに住む彼も同様だろう。本殿から少し離れたここは1人しか住んでいないのに無駄に広くて金を掛けている。毎度毎度この煌びやかさには目が眩む。視界に入れないように目を伏せながら、大きな扉を押して中に入る。人の気配は、無い。


「ジュダル様」


そう名前を呼ぶけれど、返事は無く。ああ、また抜け出してどこかに遊びに行ってしまわれたのだろう、とため息。まだ朝餉までには時間があったので、私は椅子に座り込んだ。
私は今、煌帝国の神官、“マギ”のジュダル様にお仕えしている。元々しがない文官であった私を、ジュダル様が目にかけて下さったのがきっかけだ。身分の低い私が断るなんて事も出来なくて、1ヶ月程前からジュダル様の身の回りのお世話をしているが…これがまた大変な物で。勉強しかして来なかった私には体力が無く、あちこちに行くジュダル様に着いていけない事も多々あった。最近はそんな私を見限ってしまったのか、姿を消してしまう事が多い。


「やはり、向いていないのでしょうか…」


前までのように部屋に籠もって、ひたすらに書物を読みふけっている方が性にあっているのではないか。最近はそればかりを考えている。私のような貧弱者よりももっとジュダル様に着いていけるような強い者の方がジュダル様もこうやって毎朝私を避けるように居なくなる事も無いのではないだろうか。


「あれ、男主じゃん。何してんの」
「じゅ、ジュダル様!!」


椅子から跳ね上がるようにして立つと、扉の前で首を傾げているジュダル様の元へ向かう。何だか、久々に会ったような気がするのは自分だけだろうか。


「い、今までどちらに…?」
「あー?白龍ん所だよ。あいつの朝の鍛練見てた。つかなんでお前いんの?」
「私はジュダル様を起こしに、」
「なんで急に?別に来なくてもいい」
「あ……はい」


頭を垂れていて、良かった。きっと今の私はひどく傷付いた顔をしている。今までしてきた行為をこうやっていとも簡単に否定されるのは、キツい。やはり、私なんかが、このような方の付き人をやるべきではなかったのだ。涙が出そうになったけれども、どうにか留めた。


「つーか、そんな事してたらお前がベンキョーする時間が無くなっちまうだろ」
「え…?」
「俺がお前に付き人になれって言ったけど、別に世話しなくていい」


するり、と旋毛から耳に掛けて撫でられ、背中がぞくりとした。そのまま、頬を伝い顎を掴まれ、無理やり顔を上げさせられた。こんな顔見られたくないので、小さく否定の言葉を漏らしたが、ジュダル様は楽しそうに目を細めるだけだった。


「俺は文机に向かって一生懸命なにかやってる男主に惚れたんだよ」
「ジュ、ダル様…」
「まぁ、確かに最近は一緒に居なさすぎたなー」


突然のジュダル様の言葉に私の頭は大混乱だ。そんな事初めて聞いたし、嬉しいけれどとても恥ずかしい。惚れた、とは。それは付き人ととしてですよね?色恋沙汰に疎い私はそんな言葉1つで体が熱くなってしまう。
ふと、ジュダル様が何か気づいたような表情を浮かべ、にこりと笑い、そして。


「来るなら朝じゃなくて夜来いよ。きっとお前が知らない事教えてやる」


私の唇に何か温かいものが押し付けられ、上唇を啄むようにして離れたのは確かにジュダル様の唇だった。全身が燃えるように熱くて、私は熱に浮かされたまま、ゆっくりと頷いたのだった。







130110.
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ジュダルはもちろん性的な意味で主人公に惚れました。この日の夜について詳しく誰か書いてくれませんかねまじで。多分最初はきっとジュダルが攻めでしょうが、こいつらだったら交互にやるんじゃないかなぁと下世話な事考えてみたり

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