「お前さ、もし俺がミワイチゲン様の生まれ変わりって言ったらどうする?」
「貴様…何をたわけた事を!?」
「うわ!やめっ!鞘に入ってても怖いんだから刀こっちに向けんな!」
「貴様が可笑しな事を言うからだろう」
ふんっ、と鼻を鳴らして、そっぽを向くとまたせっせとイチゲン様のストラップの修復の作業に戻る。俺と喧嘩してる時、不吉な事に紐が切れて人形が落ちたのだ。無論、クロが叫び声を上げたのは言うまでもない。
ネコと社は、いつもは飯当番だけどストラップ直しに夢中なクロの代わりに昼飯を買いに出掛けている。ネコは社と2人で出掛けられるのが嬉しかったのか、出掛ける前から上機嫌だった。反対に社は俺とクロが一緒に留守番するのが不安なのか、本当に大丈夫?と何度も問うて来た。俺はだいじょーぶ、デート楽しんできな!と笑顔で見送ったけども、正直喧嘩を勃発しない自信はあまりない。何故か分からないけれど、クロとは顔を合わせると口喧嘩ばかりしてしまう。ほぼ毎日一緒に居るようなもんなのでいつもしてるようなものだ。別に嫌いって訳じゃないんだけど…こいつ俺を見下してる感じがしてムカつくんだよな。
ジロジロとお綺麗な顔を見ながら憤慨していると、手元から目を離さずに、さっきから鼻息が荒いぞ、気持ち悪い。と蔑まれた。なんだと!と机から身を乗り出そうとしたら、滑って顎を打ち付けた。痛い。
「お前は…そう、どうして阿呆なんだ?」
「うっせぇな、ばーかばーか」
「はぁ…貴様が一言様の生まれ変わりなんて有り得ないな。あの方はそんな低俗な事は言わない」
「それは俺が低俗と言いたいのか?あぁん?」
「そうだが?」
何か文句でも?とドヤ顔でこちらを見てくるクロが心底うざい。へーへー、どうせ俺はテーゾクですよーだ。
「つーか何なんだよ、そのミワイチゲン様って。親?」
「一言様は俺の育ての親でもあるが…俺の絶対的な主だ。」
「なんかさ、お前のその態度見てると神様崇めてるみてぇ」
「…そうかもしれないな」
俺は冗談で言ったのに、クロは穏やかに笑って頷いた。その反応に少し、頬が引きつった。なんつうか、盲目的な愛っていうの?それ以外は何も見えてないみたいだ。世界に、クロとイチゲン様しか居ないかのような。そんな。
「好き、だったの?」
「好きだとかそういう事ではない。心から尊敬はしていた」
「愛してた?」
「あいし……何だその言い方は」
仄かに頬を赤く染め、恥ずかしそうに身を縮めるクロを見ながら、どこか冷めた感じで、こいつイチゲン様が死んだ時超泣いたんだろうなぁと漠然と思った。クロがこんなに感情を露わにするのはイチゲン様の時しかない。ほら、今も、何を思い付いたのか、照れながら嬉しそうにはにかむなんてさ。俺等が関わる時はしないじゃん。
「…でも、まぁ……愛されて、は居たかもしれない」
それこそ、イチゲン様にしか愛されてないみたいじゃないか。お前の世界には2人しか居なくて、そんな笑顔でそんな事言ってのけてしまうなんて。
こいつはもうちょっと自惚れた方が良い。お前の事を大事に思ってる奴なんて周りに溢れてる。社だってネコだって雪染だって…まぁ一応俺も。イチゲン様の変わりじゃなくて、それぞれがそれぞれにクロの事を思ってる。そんな狭い視野の世界じゃなくて、もっと周りを見て、自分がどういう立場に置かれてるのか理解すればいいんだ。
「はぁ…お前も変に鈍感だよな」
「?何の話だ?」
首を傾げるクロから視線を逸らし、1つ、溜め息を吐いた。
愛してたのは確かだった
(それは今も)
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全然お題に沿えてない感ハンパない