君の薄い唇から私の唇が離れる。やってしまった、と顔から血の気が引いた。薄暗い火薬倉庫の片隅で私は彼に接吻を致してしまった。もうこれは曲げられないようの無い事実だ。取り消す事も出来ない。わなわな、と震え出す彼の肩から手を放す。やってしまった、再度思う。こんなつもりじゃなかった、とか、今のは何でもない、だとか、言い訳がましい言葉しか頭に浮かばない。確かにこんなはずじゃなかったから、彼への想いは胸の奥の奥の方に封じ込めて、墓場まで持って行くつもりだったのに。何故自分はこんな愚行に走ってしまったのか。


「っ、##NAME3##、」
「へ、兵助…」


潤んだ目で片手で口を覆いこちらを見つめてくる##NAME3##の頬はうっすらと赤い。それに、はて、と不思議に思う。##NAME3##は学園一の女好きと謳われているはずだ。くのいち全員の名前と顔は一致していると、自慢しているのを呆れて見ていた。なのに、何故接吻ごときで照れているのか?仄かな希望が宿るが、それは見ない振りをする。違った場合に1番傷つくのは自分自身だからだ。ぎゅ、と私の胸元にある彼の手が服を掴んだ。胸が大きく高鳴る。なんとあざとい行動をとるのだろうこいつは。


「あの…へーすけ?」
「ッ、ああ、ごめん。さっきのは忘れてくれ…。」
「……だ」
「え?」
「やだ、俺、忘れないよ」


どくん、どくん。大きな心臓の音はどちらのものだったのか。鮮やかな桃色にそまる頬、そっと私の首の後ろに回る細くもしなやかな筋肉が付いた腕、伏せられた瞳に長い睫毛、ふわりと香る彼の香り。密着した体は熱くて、溶けそうだった。耳元で、へーすけ、と甘ったるく確かな情欲を感じられる声で囁かれる。こんな事が、こんな事が、本当にあるのだろうか。今、首筋から頭の天辺まで熱く赤くなっているだろう。しかし、その腕はしっかりと彼の腰に回されている。


「##NAME3##、好きだ」
「兵助…」


おれも、と辿々しく呟く彼の愛らしい事と言ったら!思わず私はその細い首筋に噛み付いた。





揺蕩う甘さに溺れたい



title カカリア
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