「セブちゃん」
「その呼び方は止めろと何度も言っているだろう」
「だって、ずっとこれだったじゃん」


いつものように笑おうとしているのだろうが、その笑顔に力は無くどこか引きつっていた。黒い外套に手を掛けると、手首を強い力で掴まれた。なんだ、と言うように目を向けるといつになく真剣な顔をしていて、眉間には皺が寄っていた。


「絶対、帰って来てね。」
「……ああ」
「全部終わったら、どっか静かな場所で2人で暮らそう」
「は…?なにを、」
「僕は本気だよ。」


苦しげに吐き出された言葉は小さく掠れていた。俯いた顔はきっと泣き出しそうな顔をしているのだろう。自分が闇の陣営に赴く時はいつもそんな表情をしていた。そして、無事帰宅するとほっとした幸せそうな顔で笑うのだった。


「…全てが終わったら、な」
「約束だからね。絶対守ってよ」
「…絶対、は約束出来ない。我輩が命を落とす可能性も、」
「僕はっ」


ぐっ、と手首を握る力が強くなり、急に大きくなった声量にびっくりした。未だに俯いている彼の旋毛を見下ろすと、僅かに震えているのが分かった。もしかすると泣いているのかもしれない。


「…僕は、貴方が死ぬ事が1番耐えられない…」


やはり、涙ぐんでいる声でそう呟いた。掴む力を弱め、そっと手を引き寄せると、何か祈るように掌に口付けた。突然の行為に狼狽えていると、ちゅ、と恥ずかしい音を立てて唇は離れていった。怒鳴りつけてやろうと口を開くと、やっと顔を上げた彼は自分を見上げ、朗らかに笑った。


「帰ってくるって、信じてるよ、セブルス」
「…っ!お前という奴は…」


溜め息を吐いた後、小さく頷くと、彼は笑みを深めた。目が細くなった拍子に、溜まっていた涙が溢れ、頬を伝っていった。



掌の上にキス
(懇願)
(絶対に死なないで下さい)




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