「わたしのおとうさまはすごいのよ!」


いつもの公園にいる二つ結びの女の子がよく言っていた。両手を腰に当て、目を輝かせ、嬉しそうに“おとうさま”について話出すのだ。
僕は引っ込み思案で友達もいなくて、いつも1人で砂場で砂山を作っている所に彼女は来た。あなたひとり?うん。わたしとあそばない?…うん。彼女はいつももう1人の女の子と遊んでいるイメージがあったから、少し困ったけれど僕は頷いた。鬼ごっこ、ブランコ、シーソー、砂山を作ったり、花冠を作ったりした。彼女は元気で活発でインドアな僕を連れ回して遊び回った。僕は少々疲れつつも、久々に1人ではない遊びがとても楽しかった。そして、2人が遊び疲れてベンチに座り込むと、彼女は“おとうさま”について話し出す。まじゅつ、だとか、ほうせき、だとかの意味はよく分からなかったけど、ね。すごいでしょう?と言う彼女に、一生懸命頷いた。そうすると、また嬉々として話し始めるのだ。彼女の笑顔を見ると、自分も嬉しくなって胸の辺りがあったかくなるのが心地よかった。僕の初恋はきっと、彼女だった。
2人で遊び初めて、1週間が経った頃だった。彼女が、凛が公園に来なくなった。1日、3日、1週間と待ったけれども、凛が来る事は無かった。ああ、ぼくはあきられたんだ。漠然と子供ながらに思った。そこからはまた1人で遊ぶ日々が続いた。
そんな記憶も薄れかけた高校1年の春。穂群原学園に合格した僕は薄茶色の学ランに身を包んで校門の前に佇んでいた。自分は今日からここに通うのか、とか、ここでは友達が出来るだろうか、とか、ぼんやりと考えながら佇んでいた。そこに後ろから新入生だろうか、姿勢の良い綺麗な女の子が僕の隣りを追い抜いていった。
もう、忘れていたと思っていた。何年も前の記憶が残っている訳ないって。でも、彼女は僕の初めてのたった1人の友人であり、初恋だった人だから。


「凛…?」
「え?……##NAME3##…!?」


振り返ったその瞳は、あの頃と変わらない澄み切った碧だった。



世界の余白に美しい物を埋めて



title カカリア



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