!三木女体化注意



大きなガラスの向こう側の道行く人達をぼんやりと見つめる。カウンター席で行儀悪く肘を立てながら、今夏新作のフラペチーノをずずずと音を立てて啜る。マンゴー味うまい。
テーブルの下で膝を擦り合わせる。膝上十何センチのスカートには未だに慣れない。いつもはスカートの短さなんて髪の毛の寝癖なんて気にしていなかったのに…滝夜叉丸じゃあるまいし。ただ大好きな銃器の事だけを考えていたのに、今は違う。あの人の目に付くように、あの人の好みに近付けるように努力して、あの人の事ばかり考えている。恋、とは恐ろしいものだと重々承知した。恋は病だ。身体が痺れ、思考を鈍らせる立派な病気だ。大きな溜め息を吐く。だって、こんなストーカー紛いな事もやってのけてしまうのだから。





『な、なんでよりにもよってあの人を!?』
『三木って阿呆だったのか』
『私は阿呆じゃない!』


お昼休み、いつものメンバーでご飯を食べている時に恋愛初心者な私は仕方なく相談してみた。しかし、滝夜叉丸は驚き退き、タカ丸さんはびっくりして言葉も出ず、喜八郎に至っては阿呆だなんて抜かしやがった。こいつらに話したのが馬鹿だった、と早々に後悔した。


『まさかお前があの瑞沢##NAME3##先輩を好きになるとは…』
『なんだよ…悪いか』
『いや、意外っていうかねぇ。』
『ああいうタイプは嫌いだと思ってた』


タカ丸さんと喜八郎が顔を見合わせ、ねぇーと声を揃えた。
そう、私が好きになったのは、チャラい・女たらし・ヤリチンで有名な瑞沢##NAME3##先輩なのである。何とも良い評判が無い人である。学年が2つも違う私達にも彼は有名人だった。いつも違う美人が隣りに居る先輩はそれに負けない位美貌を放っていた。いつからだろうか、私もその隣りに並んでみたいと思ったのは。その瞬間、私の心臓に鈍痛が走ったのだ。銃器の本を抱え、ぼさぼさの髪を携えた私は彼の目に映っていただろうか。貴方の目に、映りたいと願った、その時から私は、





それにしてもこれはやり過ぎだと自分でも思う。このカフェは##NAME3##先輩のいくつかあるデートコースの中で絶対に通る場所なのだ。その先にホテル街があるからなのだけど。私はほぼ毎日ここから異なる女性の肩を抱く##NAME3##先輩を眺めている。自分からその隣りに行くなんて事はしない、私はあの人の特別になりたいのだから。


(あ、…##NAME3##先輩…?)


お目当ての人は何故か1人で居た。今日はデートじゃないのか?じゃあ、なんでここに…?思わず腰を浮かせ見つめていると、ふと目が合い笑いかけられた。やばいっ!慌てて顔を伏せるも、手遅れだ。絶対見てたのバレた。ああ、気持ち悪がられるかもしれない。でも、やはりあの人の笑顔は素敵で、


「ねぇ、あんたが俺のストーカーさん?」
「え、」


いつの間にか私の横に立っている人が居て。その形の良い唇から放たれた言葉に顔が青くなる一方でこんな側にあの人が居るなんて、と身体が熱くなる。なんで、何故。


「##NAME3##先輩…!?」
「いつもこっから俺らの事見てるでしょ」
「ああああ、あの、そそ、それはっ、あの、」


どこか楽しそうな顔の##NAME3##先輩もかっこいい、じゃなくて。どうしようどうしよう、気持ち悪いと思われてしまう。こんなストーカー紛いな事してる女、気持ち悪いに決まってる。どうしよう。特別なんて、そんなの夢のまた夢だ。涙が出てきそうになって、唇を噛み締め、スカートの裾を握った。すると、そっと##NAME3##先輩の手が肩に添えられて、触れられた箇所が燃えるように熱くなって、私はもう違う意味で泣きそうになっていた。ただただ、恥ずかしい。嬉しい。すき。だいすきだ。


「##NAME3##せんぱ、」
「こんな可愛いストーカーなら歓迎するよ。ねぇ、見てるだけでいいの?」


俺の事、もっと知りたくない?俺も、君の事知りたい。
だなんて、囁かれたのならば。それは甘い麻薬のように私を蝕んでいった。その手を取ってしまったら、もう戻れない。いや、もう戻れなくていい。触れてしまえば話してしまえば、貴方をもっと求める事は知っていたから。





ピンク色した夜が来る



title カカリア

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テーマ「推しとの恋」
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