七年生傍観
2011/02/150



私の大切な子達でした。



優しく、強く、優秀な子達でした。



その子達は、もういません。





首を斬られて一瞬に死んだ子、敵を道連れに毒を吸い、長々苦しんで息絶えた子。学園まで戻る役を負い、仲間が居なくなっていくのを見ながら、一番最後まで生きていた子。どこでどうなってしまったかすら、分からない子達。





どの子も私の大切な……可愛い可愛い教え子達でした。





貴方達を忍術学園へ引き入れたのは、私でした。


日ノ本各地に足を運び、七年生になるべく素質のあった、貴方達を選び出したのは、他ならぬ私でした。


自ら志願した人も、二つ返事で了承した人も居ましたし、何度も説得して、ようやっと入学すると言った人も居ましたよね。覚えています………忘れるものですか。





………そう。私が、悪かったのです。育て方を、間違えたのでしょう。





貴方達を、もっと忍らしく、冷酷になれと教えていたならば。きっと貴方達は、学園を気にも止めず、離れ、今もきっと生きていたのでしょう。





貴方達を死なせたのは。、きっと、私だったのでしょう。





貴方達はとても優しかった。後輩を、何より学園を愛してくれていました。


貴方達は、そうする以外に選択肢がありました。貴方達には、生きる道がありました。


……けれど。私が聞いた最後の問いに貴方達は、何の迷いもなく是と言いました。


そんな貴方達を、どうして私が止められたでしょうか。止める術が、あったのでしょうか。私には分かりませんでした。教師、失格でした。


何も言わず、貴方達が準備をしている間。私も黙って、それを見ていました。





………そして。





貴方達が、一人、またひとりと、教室から去っていきました。





“室町せんせ、”



“時代先生ー、”





“いってきます―――……”





………しかし、私は。誰一人の“ただいま”を。わたしは、きけませんでした。





……七年生は、もういません。





『七年生』と呼ばれていた、忍術学園で最も優しく、最も強かった者達は、もう、誰もいません。


生徒が居ない教室に、教師だけが残っているなんて。滑稽窮まりありませんよね。





私も、ここを去りましょう。





貴方達は、言いました。





“誰に原因があるわけではないんです”



“ですから、先生”



“何もしないでくださいね―――……”





貴方達が、そう言いましたから。





ですから。………私は『何も』せず、ここを去ることにしましょう。誰を助けることもなく………誰を傷付ける事もなく。





『七年生』は、もういません。





日ノ本の国が、平和に皆集まって、統べられていた時は終わりました。





『室町時代』も、どこかかなたへと消えましょう。










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