02



秋も段々と深まってきて、ホグワーツの木々も紅葉が始まってきた。

魔法生物の授業の帰り、さっきまで題材としてさわっていたユニコーンのさらさらの毛並みだとか、愛らしい長い睫毛だとかを友人たちと話しながら校舎へと歩いていた。
ディアナも今年で3年生なわけで、授業が選択できるようになったのだ。両親の意見と自分の興味から、いくつか選択させてもらっている。
過保護な両親だが、ディアナの勤勉さと才能をよくしっているので、ある程度は自由にさせてくれる…が、マグル学だけは取らせてくれなかったのが心残りである。
前世が魔法の使えない いわゆるマグルだったので、その視点から学べるのはすごく楽しいと思ったのだけど、やはり説得はできなかった。

ルームメイトでもあるメアリが、ディアナにばかり仔ユニコーンが寄っていくのは 何かのチャームを使っているからでは?と冗談半分で疑って、くすぐりをかけてくるので逃げようと走りだすと、校舎の影で長身の男性とぶつかってしまった。
飛ばされそうになったディアナの体を ぶつかった長身の彼ーークィリナス・クィレルが支える。


「みみ Ms.マルフォイ、あ あぶないではないで すす か…」

今年度から様子がガラリと変わってしまったこの教師に スリザリンの学生は胡乱げな眼を向けていた。
ディアナも その正体を知っているので出来るだけ避けて通っていたけれど、とうとう捕まってしまったかと 内心冷や汗が止まらない。


「すみません、クィレル先生…お怪我はありませんか?」
「こ こちらの 台詞ですよ。り 良家の子女が…騒がしく走っては いいいけない」


そういう精神疾患の人に偏見はないつもりだが、その聞き取りづらい吃音に辟易している内心を誤魔化すように笑みを浮かべて流す。
メアリたちも追いついたようで背後で様子を伺っているのが見て取れたので、次の授業があるので失礼します と離れようとすれば腕を引かれてその懐に入り込んでしまった。
にんにくというよりスパイスのような…どこか仄暗いにおいにディアナは身を硬くする。


「君の母方の家系に予知夢を見る者がいるそうだね…。闇の力について論文を書いていてね、できれば話を聞かせてほしいのだが」


吃音のないしっかりとした口調にディアナのは思わず後ずさる。
クィレルはすでに校内へ向けて歩き出していた。




「ディアナ、クィレル先生に何言われてたの?」
「あー、…提出したレポートに名前書き忘れたみたいで。気をつけなさいって」

「Ms.マルフォイが? めっずらしい!」
「ディアナ嬢、すごい顔してるぞ。ターバンの臭いを間近で嗅いだんだろう」
「それはお気の毒!」



後日、よほど顔色が悪かったらしいディアナを見て、スリザリンから「クィレル先生の体臭は吐くほど臭い」といううわさが流れた。
教科書カバンからストールが抜き取られていたことに気づいたのは、それからずっと後だった。










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