「お〜い、ミリアリア! そろそろリミットだぞ?!」

感傷に浸る中、大きな声が、彼女の耳に届いた。
ディアッカである。彼は大きなカバンを手に、ミリアリアの元へと駆け上がってきた。
そして、彼女の顔を見て……

「もう戻らないと――って、何で泣いてんの?」
「うるさいなあ……ちょっと黙ってて」

素直に驚くディアッカとは対照的に、涙を拭い、彼女は愛用のカメラを構えた。
被写体は――たった今崩れていった、赤みがかった花。

「……ひでぇな」

花の残骸を前に、ディアッカの顔も険しくなる。
いや、花だけじゃない。歩けば歩くほど、島の惨状に、気分はどんどん滅入っていく。


全てが汚染された世界――


「……宇宙用装備に、まさかここまでの影響力があるとはねぇ……」
「すぐ傍で撃たれたからね……被害甚大よ」
「もしここに、当時人が居たら……」
「生きてられるわけないわ」

非難を込め、彼女は言い切った。

島の近海で――ザフト艦が一隻、対宇宙戦用兵器を使って早一年。未だ大気は汚染され、島には国の許可を取らなければ入れないのが現状だ。
もちろん、時間制限付きで。

生き残るための手段だったのは分かる。
けど……


「傷つくのはいつも、関係の無い人」


茫然と、ミリアリアは呻く。
思い出しているのだろう。これまで、自分が写真という形に残してきた、戦地の数々を。
どこに行っても、どんな場所でも、泣いているのは――……


「この子達は、何も悪くないのに……」
「……そうやって、いつも苦しみながら写真撮ってんの?」

小さな背中を目に、ディアッカもまた呟いた。




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