……音痴??

「自分が上手いなんて思ってないけど……すごい、聞けたもんじゃないくらい、すっごく音外しちゃってたの! もう……恥ずかしくて歌えないよ」

カガリは軽く目眩を覚えた。
そんな理由で、アスランとの憩いの時間を奪われたのか――と。
いや、今も奪われ続けている。なんせディアッカ、一晩経ってもなお、アスランを解放していないのだから。
なので彼女は、撤回させたいのだ。ミリアリアが言った、「カラオケ行かない」という言葉を。

「けど……ディアッカは、歌声可愛すぎてメロメロになった――とか言ってたぞ?」
「良いよ、カガリ……慰めてくれなくて」
「いや、実際、泣きながら訴えてたんだが……もうミリィの可愛い歌声が聞けないって」

聞く耳を全く持とうとしないミリアリアを前に、カガリの目は座ってしまう。
その態度が、良い方向に進んだのだろうか。

「……ホント?」
「誓ってホント」

少しだけ、彼女の態度が軟化した。
あと、もう一押し。

「だからさ……仲直りしろよ。良いじゃないか。あいつは、お前の歌声、聞きたがってるんだからさ」
「うん……」


顔を曇らせながらも、ミリアリアは頷いた。おかげでカガリは、心の中でガッツポーズをとった――のだが。


「……でも……」


続く言葉が、今度はカガリの表情を曇らせる。



「やっぱり……私……」
「何だよ、うじうじして。ミリアリアらしくないぞ? ディアッカが可愛いって言ってるの、信じられないか?」
「そうじゃないの。そうじゃなくて……」
「他にもまだ、理由あるのか?」
「…………」

彼女は俯いたまま、何も言わない。その沈黙が、カガリの問いかけに対し、肯定の意を示していた。

「言ってみろよ。もしかしたら、解決するかもしれないぞ?」

カガリは必死だった。
必死で、ミリアリアに「もうディアッカとカラオケ行かない」宣言を破棄させようとしていた。
じゃないと――今日もまた、ディアッカがアスランの部屋に居座るかもしれない。

それだけは、勘弁願いたい。

「ほら、ミリアリア」
「……だって……」

覗き込んでくるカガリから目を反らすよう、ミリアリアは顔を背ける。
そして……ぽそっと小さく呟いた。


「…………カッコイイんだもん」
「は?」


耳を疑う言葉が、ミリアリアの口から響き渡る。
確かに言った。
カッコイイ――と。
そして彼女はまくしたてる。

「だって、本当にカッコイイのよ? あいつの歌声!! そりゃ、普段もカッコイイんだけど、いつも以上に良い男に見えちゃって……なんてゆーのかな。惚れ直したって感じ? あんなの毎回聞かせられたら、脳天直撃、くらげ状態よ。心臓絶対もたないって!!」

マシンガンの様に繰り出された叫びを要約すれば――惚気だ。
ノロケである。惚気以外の何者でもない。

バカップル発・くだらなすぎる悩み事――

「だからね、カガリ。ディアッカの歌声、絶対に聞いちゃ駄目よ? てか、聞かないでね?!」
「……はいはい」

この瞬間、カガリは決意した。
もし、後でアスランの部屋に行って、まだディアッカが女々しく絡んでいたら――蹴り出してやろう、と。





-end-

結びに一言
ディアッカさんの色っぽい歌声に悩殺ッ☆

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