「ねえ……本当に、誰なの? 一人じゃないって……あなたは誰とここに来てるの?!」
「秘密」

歩き、ミリアリアの手を引っ張る少女は、質問に全く答えようとしない。

「迷子じゃないなら、なんで一人なの?」
「一緒に来た人、お姉ちゃんの知らない人だから」
「は?」

訳が分からない。
一つ言える事は、少女が何の迷いも無く、ある場所に向かって歩いていること。


彼女は――ディアッカの居場所を知っている――??


「ほら、発見」

一つの答えにたどり着いた時、突如視界が晴れた。
数メートル先に、探していた顔がある。

ディアッカが、辺りを探るよう目を走らせ――こちらに向く。


「ミリアリア!!」


目が合って、ディアッカは叫んだ。
こっちに走ってくる。

「ほら」

とん、と少女がミリアリアの背中を押す。



「もう、はぐれちゃダメよ? ……ミリアリア」



耳に響く声。
脳に届く囁き。

今のは――


「悪いっ! 年配のご婦人に、エレベーターまでの道聞かれて案内しちまって……」

ミリアリアを抱き寄せ、やおら言い訳を言い始めるディアッカだが、彼女の耳には届かない。
信じられない眼差しで、少女を見ているミリアリアには。

「……どうした?」

不思議に思ったディアッカもまた、少女を捉える。


真紅の風船を持ち、満足そうに佇む少女を。


「バイバイ」
「あ、待って――」


ミリアリアの訴えも虚しく、少女は人ごみに消えていく。
真紅の風船もまた、一瞬で見えなくなった。

「……何だったんだ? あの、どうもこう……背筋に寒気を走らせる顔のガキは……」

少女へのディアッカの感想も、彼にとっては悪気のあるものじゃないのだが、ミリアリアにはカチンと来てしまう。

「何ソレ、ひどい!」
「仕方ねーじゃん! 嫌な記憶しか浮かばなかったんだからよ!!」
「嫌な記憶?」
「銃口向けられた記憶」

そこで、会話が止まる。
ディアッカも、あの女の子から、彼女と同じ人物を連想したのだ。


まだAAに乗ってる際、ディアッカに銃口を向けた少女を――


「それにしても、腹減ったなー。飯でも食いに行くか」
「……はいはい」

二人の足が動き出す。
並んで、同じ速度で、同じ方向に。

その時、ミリアリアもディアッカも気がつかなかった。



笑い合う中、彼女の持っている紅い風船が、空気に溶けていったことに――





-end-

結びに一言
迷子じゃなくなったから、消え去った風船。
ええと、風船の女の子は、ちょいと現世に遊びに来たフレイさんで(何となくフォローを入れてみる)

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