ただ、ディアッカを頼っても、気にかかることはある。
話を振った時、彼は問い返したのだ。


「それ、俺がお前のこと好きって分かって言ってんの?」
「え?」


思わず目を丸くしてしまう話。


ディアッカが、私を好き――??


脳天に、軽い衝撃が走る。
すると彼は茶化すように、

「……おいおい、まさか本気にした? 冗談だよ、じょーだん」
「じょう……だん?」
「そ。冗談」

最後にディアッカは笑い飛ばしたが、どうも気になって。


「……ねえ、ディアッカ……あの時のって」

訊きにくいが、ミリアリアは勇気を出して、問うてみる。

「あの時の、好きとかって話……」
「――が、どーかした?」
「本当に……冗談?」

一瞬。
ほんの一瞬、ディアッカの目がくりっと丸くなる。

たった一瞬だけ――

「……もしかしてミリアリア、お芝居じゃなくて、俺と本当の恋愛したいとか?」
「な! そ、そーじゃなくて――そーゆー意味じゃなくて!!」
「はいはい、冗談じょーだん。本当、冗談通じないよな、お前」

笑いながら、ディアッカは言った。

「冗談と本気の区別付くようになれよ」
「……じゃ、本当に、冗談だったのね?」
「当たり前っしょ」


ちくん。


断言するディアッカの心に、小さな棘が刺さる。
本当は、冗談じゃない。でも本当だといえば、ミリアリアは今まで以上に無い傷を負うことになるだろう。
ただでさえ、この『芝居』に罪悪感を感じているのに、この上、人の恋路まで利用している――なんて思ってしまったら最後、また彼女が苦しみの淵に追いやられそうで。

だから、ディアッカは嘘をつく。


「同じ戦友として、大事に思ってるだけだよ」


自分の心に嘘をつき、痛みに耐え、守ろうとする。



それは痛くて、とても苦しくて……そして哀しく優しく儚い『嘘』――……





-end-

結びに一言
ディアッカは嘘をつきつける。ミリアリアが一人で歩き出せる日まで。

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