――その日ぼく達は、うそつきの恋を交わした――



「サイから、怒りの電話食らったんですけど〜」
「ごめん。まさか取り乱すなんて思わなくて……大丈夫だった?」
「まあ、うまく取り繕ってはおいたけど」

ちょっと不満げに呟くディアッカは、喪服を着ていた。
隣にいる、ミリアリアも。

あっという間に時は過ぎ、かの慰霊式典の日……二人は最後方から、式を眺めていた。
話題は、この間のサイとの一件。ミリアリアとディアッカが付き合っている――という情報が信じられず、サイはすぐに、ディアッカへと連絡を取った。

そして、散々怒られた。

サイはこう思ってしまったのだ。
ディアッカが弱ってるミリアリアにつけ込んで、無理矢理彼女に、恋人になるよう促して、ミリアリアもまた、苦しみから逃れたく、彼の誘いに乗ってしまったのではないか……と。
考えてしまったら、放っておけないのがサイの性分だ。

「あれが、あいつの良いとこだよな」
「うん……でも、ごめん……」

ミリアリアは、すまなそうに頭を下げる。

「ごめんね、ディアッカ……私……」
「別に、気にすんなって」

言い様、ディアッカはぎゅっとミリアリアを抱き寄せた。
震える肩が教えてくれる。


彼女が、泣いていることを――


「悲しいんだろ? もっとしっかり泣けよ」
「だっ……」
「何のために、こんな芝居打ってんだ?」

優しい声が、耳から脳に伝わっていく。


そう、これはお芝居。
ミリアリアが考えた、芝居の関係。


式典に参加すれば……少しでも、トールを思い出にする道が近づくと思って。
一歩でも良い、前に向かって歩ける様な気がしたのだ。
けど、一人で行く勇気は無い。サイやキラ……彼らと行けば、過剰なほどの心配をかけてしまうだろう。

もう、大丈夫だと。
大好きな人たちに、私はもう大丈夫と言いたいのもあった。
安心させたくて……そう思ったら、彼しか――ディアッカを頼るしか思いつかなかった。



――私の、恋人のフリをして――




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