それは、ほんの10分ほど前のこと。お昼を食べるため、ミリアリアはディアッカとレストランに入った。
仲良く昼食を楽しんで、食後のデザートには大きな苺パフェがやって来て……その天辺に鎮座していた特大な苺を、あろうことかディアッカが食べてしまったのである。
楽しみに、楽しみにとっておいたのに。


そしてミリアリアは激昂した。


「あの苺ねー、パフェの命なのよ?! なんのための苺パフェよ! あの苺のためのパフェでしょ?! なのに、なのに……なーのーにーっ!!」
「じゃ、どーしたら機嫌直してくれんだよ……」

ちょっとした悪戯のつもりだったのに。
まさか苺一つで、ここまでミリアリアの機嫌を損ねてしまうとは――
こんなに謝ってるのに、全然許してくれる気配が無い。
ディアッカは完全に打つ手を見失い、その場にしゃがみ込んでしまった。

「……落ち込んでるフリ?」
「……俺ってほんと、信用無ぇ……」

声は、今にも泣き出しそうで。
ミリアリアの中にも、少し変化が生まれた。

「……じゃ、はい」
「あ?」

何が「はい」なのか――見上げると、そこにはミリアリアの鞄があった。
なぜか彼女が、自分の鞄を差し出している。

「……いっぱい反省したみたいだから、譲歩」

彼女の行動が、持てと言っている。
自分の鞄を持て、と。

「私の機嫌、取りたいんでしょ? 一日荷物持ちで、手、打ってあげる」

頬を膨らませ、目はディアッカを見ていないものの、そこには少しだけ、雪解けの表情が見え隠れしている。

仲直りの兆候に、ディアッカは一瞬で元気になった。

「おっけーおっけー。荷物は任せな! 何なら、ミリアリアも担いじゃう?」
「馬鹿なこと言わないで!」

冷たくツッコミを入れたミリアリアは、右手でディアッカを叩いて――そのまま彼の左手に、しっかり指を絡めていった。




-end-

結びに一言
ただ一方的にミリィさんが怒ってるだけの、しかもパフェの苺一つで怒ってるだけの話……って良いのかなあ(不安なら載せるなって)

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