何か――それは、ミリアリア。
小刻みに震えて、ディアッカに抱きつくミリアリア。


どうやら相当怖いものに遭遇したらしく、声も出せずに震えている。

「……どーしたのさ」
「うるさいうるさいっ!」

恐怖を振り解こうと、わざと大きな声を上げるミリアリアの姿に、笑いは止まってくれない。

「笑ってんじゃないわよ!!」
「だって、あんなに平気っぽかったのに……まさかこんなに怖がりだとは……」
「怖がりじゃないっ! ただ、びっくりしてるだけよ!!」


――それを怖がってるって言うんだよ――


と思ってはみても、口に出したところでミリアリアが悔しがるだけなので、心内に潜めておく。

「ほらほら、ミリアリア。俺が傍にいるから、怖くないこわくな〜い」
「ななな、なによ、あんただって怖いくせに……」
「は? 何で俺が、こんなのに怖がんなくちゃいけないのさ」
「こ、わくないの??」
「天然物ならまだしも、人工物で驚いてられるかよ。そんなんじゃ、軍人は勤まりませんて」

にっこり笑うディアッカを前に、ミリアリアの顔は引きつっていく。

「じゃ、なんであんなに嫌がって――」
「俺、驚かされるの好きじゃないの。ミリアリアは全然怖がりそうもなかったし……こんな展開、全く予想できなかったから」

言ってディアッカは、ミリアリアに抱きついた。

「可愛いな〜、ミリアリアは」
「はーなーれーてーよー!!」
「え? 本当に離れて良いの??」
「ううっ」

言葉につまり――少し考えた結果、ミリアリアはディアッカの腕にしがみついた。
怖い。
認めたくないけど、ここで離れるのは――すこぶる怖い。


くっついたまま、歩きたい――
この時ミリアリアは、プライドよりも、恐怖心が優勢だった。

普段だったら絶対に出ない『お願い』が、紡がれる。

「……ここ出るまで、腕貸して」
「ここと言わずに、永遠に貸し出しますが?」

余裕綽々の顔が、ミリアリアの悔しさを煽ってくれる。

「……お化け屋敷出たら、腕振り解いてやるぅ……」
「はっはっはっ。出来るかな〜?」

呻くミリアリアとは対照的に、絶好調に上機嫌なディアッカだった。





そして。
お化け屋敷を出た直後、宣告通り腕を振り解かれたディアッカは――八つ当たりと言わんばかりに、思いっきり足を踏まれるのだった。





-end-

結びに一言
ちょっと話が二転三転で反省点多し(涙)
……下手にホラー好きにしないで、最初から怖がらせとけば良かったかなーと思いつつ。

*前次#
戻る0