でもディアッカは――そんな素振りを見せることが無い。

「あんたは……」
「ん?」
「不安になることってないの?」
「不安、ねえ……」

言いながら、横目でちらりとミリアリアを見て、一度目をそらしたものの――すぐに視野を元に戻し、驚くほどさらりと言い切った。
「あるよ」
「何?」
「お前」

時が止まる。
動けなくなったミリアリアに真摯な眼差しを向け、彼は続けた。

「お前絡みだと、不安だらけ」


とくん。


心臓の下の方から、音が響き渡る。

「目の届く場所にいないと、危険なことに首突っ込んでんじゃねーかって考えちまうし、他の男と仲良くしてるの見ちまうと、愛想尽かされたんじゃないかって、気が気じゃなくなる」
「そ、そんなこと言われても……」
「何だかなー。俺こんな、独占欲強くなかったはずなんだけどなー」

独占欲。
その言葉が、ミリアリアの脈動をもっと早めた。


独占、されている。


「今も、実は嬉しいんだよな。ハプニングだけど、二人っきりになれて」
「……バカ」

照れながら、ミリアリアは呻く。
ここにいるのは二人だけ。
たった二人きりの部屋。
閉じ込められてしまったがゆえ、電気が復旧しない限り――救援が来ない限り、二人だけの時間が続く。

「まあ、馬鹿の戯言って思ってて良いけどさー……もうちょっとは二人きりでいたいかな〜」

ディアッカは、ミリアリアを見ないで――彼女とは反対側へと目を向け、冗談のように言った。

それが精一杯。
精一杯の、彼の本音。


ミリアリアは不覚にも――彼の想いに応えたいと、素直に思ってしまった。


「……ずっとこのままは困るけど……」

ディアッカの肩に、頭を乗せ、ミリアリアは呟く。

「……今夜一晩くらいなら、面倒見てやっても良いわよ?」

それは、遠回しな愛情表現。
遠回しすぎる、彼女の気持ち。



――私も、ディアッカと一緒に居たいよ――?



不安の交差。
少し深まる二人の距離。
それは、二人ぽっちの夜のお話――





-end-

結びに一言
二人きりになりたくて……
そんな二人の重なる想い。

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