「まー、ここまで当てになんないとは思わなかったけどな」
「当てになんないって?」
「おお、よく聞いてくれたな、シン坊よ。実はこいつ、ホワイトデーが何か知らないらしいんだわ」
「――は?」

シンは目を真ん丸にして、アスランを見る。
そして、ずばっと訊いてみた。

「……ほんとにあんた、元エリート??」
「悪いか!」

シンにまで哀れみの目を向けられたことに、さすがのアスランもショックだった様だ。もう、どう反論して良いかも分からない状態らしい。

「バレンタインにチョコを貰ったお返しをするのが、ホワイトデーですよ。誰かから貰ったんなら、あんたも返した方が良いんじゃないの?」
「それが、明日だというのか?」
「そ。早目に用意した方が良いんじゃないの??」
「う……」

指摘され、アスランは何やら考え出し――……ふと、シンの持っている紙包みに目を留めた。

「……シン、それは?」
「ルナへのプレゼント」
「ホワイトデーのか?!」
「え? そうですけど……」

突然ディアッカも食いついてきたせいか、たじろぐシン。
ディアッカは、嬉々としてシンを見る。なんせ、ようやく出会えた「リアルな回答」なのだから。

「何渡すんだよ。あの譲ちゃんに」
「ホワイトチョコですけど……ルナが、今女の子の間で流行ってる店があるって言って――」
「どこだ、それは!!」

言いながら、アスランが立ち上がる。
ディアッカ以上の食らいつきを見せる男に、シンはたじろぐどころか、圧倒されて動けなくなる。

「教えろ、シン! いや、案内してくれ!」
「え? まさか今から――」
「当たり前だろう!!」

言うとアスランは、シンを引っ張り歩き出す。

「あ、まて、アスラン――」

これを逃す手は無い。ディアッカも一緒について行こうとしたが、

「ディアッカ、会計は任せたぞ!!」
「あ? アスラン?!」

かなり慌てていたんだろう。ディアッカを置いて、二人は店を出て行ってしまう。
残されたのはディアッカと、二人分のコーヒー代請求書。

「何で俺が払うんだよ……」

領収書片手のディアッカは、ひどい疲労感に襲われていた。




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