こうしてミリアリアは、ディアッカの家へと連れてこられた。

「……広っ」

彼の家はすこぶる広い。しかして、踊りのために連れて行かれた和室は、この部屋にたどり着くまでに見てきたどの部屋よりも、広大な面積を持っていた。
どこに居れば良いか分からなくて、適当に腰を下ろし、ディアッカを待つ。


一分。
二分。
……五分と待って。


さすがに、少し苛々してくる。

「……まさか、逃げたりしないわよね……」
「んなことするかっ」

後ろから、頭にポンと手を乗せられた。

「ちょっと、ようやく登場?? 遅い――」
「悪い悪い。支度に手間取った」

ごめん――と手を立てるディアッカの姿に、ミリアリアは呆然としてしまう。
いや、その出で立ちに。


褐色の肌を際立たせる、白き「和」の衣装。


絶対似合わないと思っていたそれは、しっかり着こなしているせいか、恐ろしいほどまでに合っていた。

「何? もう惚れちゃった?」
「そ、そんなことないわよ……」

その語尾は、弱々しい。
変だ。強く否定出来ない。

「ま、お楽しみはこれからだ」

ディアッカは、立ち位置らしき所で足を止めると、急に真面目な表情で、ミリアリアに手をかざした。


「演目は[恋歌]。恋を唄う歌だ」
「恋、を?」
「一人の青年が、狂おしいほど愛する女を求める歌」

しなやかに、ディアッカの手が舞い上がる。


そして――ディアッカの踊りが始まった。



*前次#
戻る0